第5話 ギルド【サラマンダー】②
光がゆっくりと落ちて目を開くとそこには大量の人間が武装してこちらを見ていた。
「これはどういう事かな?ギルド【ファフニール】の諸君」
サラマンダーのギルド長ボルケーノですら大きく息を飲んだ。少し手を大きく広げた様子を見せると副隊長のマグルマはレイを隠すようにして前に出た。
「そこに劣等種のレイがいるだろう。どうやって入ったのか知らないが絶塔(ゴディアス)への不正侵入は竜神に背きし行いとして万死に値する」
前に出てきたシンがボルケーノの前に立ち塞がった。どこからか絶塔に入る姿を見ていた様子だったのだ。
「それを隠そうとするお前らも同罪となるぞ。ギルド【サラマンダー】の諸君」
たった17歳の少年の言葉に副隊長ですら動揺を隠しきれていなかった。それ程までにシンという存在は強く大きな存在になっていたのだった。
「レイ。前に来なさい」
ボルケーノに呼ばれたレイは恐る恐る前に出た。止めようとしたクウェインだったが一歩前に出ただけでどうする事も出来ずに立ち止まってしまった。
「レイ、お前自分のやった事が分かっているのか?どうやって侵入したのかたっぷりと聞かせてもらうぞ」
「シン……」
シンの目はまるで地を這う虫を見るかの様に冷たく、劣等種である自分を思い出される。これ程までに差が付いたのかと実感する。
緊迫した空気の中、ボルケーノは口を開いた。
「実はな、レイ君は昨日の晩にノードを覚醒したんだ。そこで行く宛がなさそうな様子だったのでクウェインの知り合いという事もあり、サラマンダーへの入団をさせた。楽しみでギルド隊より先に入ってしまったが、気持ちを考えるとそれ程悪く言われる筋合いもないであろうに」
そう言ってレイの背中を叩いた。ボルケーノは盾となってくれたのだった。
「レイが、ノードを?そんな馬鹿な。ありえない。だったら証拠を見せろ!ノードを発動させて俺たちに証明しろ。噓偽りであればギルド長ボルケーノ、あんたも容赦しない」
「分かった。黙ってろシン。今見せてやっからよ」
レイは前に出た。
クウェインの言葉を信じて一か八かの賭けに挑む。
≪レイの場合特殊ってのは無理あっからな~。剣を持って何も感じないなら攻撃型でもないんだろ≫
剣以外持った事のないレイにとって攻撃型ではないノードかもしれない。つまり手を前に出して何かを発動させるノード。
「うおおおおおおおおおお!!!」
捻りだせ。
内なる力を何でもいいから捻りだせ。
手が光るのか、氷の刃が降るのか、バリアが出るのか。
何でもいい!!
何でもいいから出やがれ!!
ひゅ~~~……
そこにいた全員の周りを小さな風が吹いた。
扇風機を当てた程度の風。
静寂としたその空気はたった一言で大きく変化する。
「ぷっ」
「「「アハハハハハハハハハハハ!!!!」」」
大勢の人間が大いに笑った。サラマンダーの人たちですら笑い転げている。
「なあ、レイ。お前それ【そよ風】のノードって事か。ハハハ!お前らしいノード過ぎるぜ!ハハハハハ!!悪かったな疑って。明日からも頑張ってくれよ、そよ風くん」
ファフニールの軍勢は笑いながら帰っていった。
羞恥心だとか劣等感だとかそういったものを感じている余裕はレイには全くなかった。
こんな、こんな程度のノードで9層攻略?
不可能だ。
誰もギルドになんか入れてくれない。
迷惑がられてお終いだ。
ファフニールどころかサラマンダーの全員にも笑われた。
「こんな……こんな……」
レイが自分の震えた手を見ていた時だった。
「さ、面倒事も終わったんだ。ギルドへ戻るぞ野郎ども!」
ぞろぞろと帰ろうとするサラマンダーのみんなを見てレイは一歩も動く事が出来なかった。さっきは庇ってくれたけど使い物にならない事が分かった上で仲間に入れてくれるはずがない。
それが現実だ。
そう思いレイは一人で帰ろうとした。
「どうした~レイ。どこ行こうってんだよ!」
「いや、俺……こんなノードじゃ役に立てないし……」
そう言った時にはサラマンダーの全員が後ろに立っていた。そしてボルケーノはレイの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「さっきの漢気は胸に熱いものを感じたぞ。そよ風と馬鹿にされようがお前の心にある炎は消せはしない。お前はとっくにサラマンダーの一員だよ」
「さ、行くぞレイ。今からバーベキューだからよ~!」
背中を押してくれたサラマンダーのみんなと同じ足取りで歩き出す。
冒険の一歩目を繋いでくれた炎の絆を絶対に忘れはしない。
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