第6話 ギルド【サラマンダー】③
ギルド【サラマンダー】は熱い男女のメンバー勢揃いだった。
大きな夢を語る者、強い力自慢をする者、大樽の酒を酌み交わす者。まるで賑やかな祭りの様に楽しくバーベキューをした。
ギルド自体は全体で見れば中小程度で小さなコテージに大きなテントが隣にある。コテージは女性用に作られているのだが、サラマンダーの女性は熱い者が多いせいか男女問わずあまり関係ない。
「レイ~!楽しんでるか~!」
クウェインは酔ったまま絡んできた。先程まで大樽でゴクゴクと飲んでいたせいか顔は真っ赤になっている。
「お前、顔がサラマンダーになってるぞ」
「へへ、いい事じゃないか!サラマンダー最高ってな!」
本当に恵まれたギルドに入れたとレイは感じていた。誰もが笑顔で誰もが楽しく笑って過ごしている。こんな温かなギルドは他にないだろう。
「ところでノードって強くなったりするのか?」
「そうだな!ノードの強さによってギルドにS~Gでクラス分けされるのさ。俺の【連撃】はまだクラスEだけどもっと強くなってやるぜ!」
貰ったノードと言えど使える本人の適正にもよらないノードではあの程度の力しか発揮出来ないのかもしれない。物心ついた頃から手足の様に使えたのだからそれを今覚えたくらいじゃどうにもならないか。
レイはぐいっと酒を飲んだ。
「おっ!いいぞ~レイ!」
「やるじゃねぇか!」
周りから大きな声があがっているが視界はクラクラと揺らいで地面に倒れ込んでしまった。初めて飲んだ酒もどうやら適性がないのかもしれない。
―――――――――――――――――――――
朝になりレイは寝起きすぐにノードの練習をしていた。
どれだけやってもそよ風程度しか出ず、木の葉を小さな竜巻の様に揺らす程度だった。それでもノードを手に入れたレイにとっては大きな一歩である事に間違いはなかった。
「お、やってんな~レイ。一杯飲んでぶっ倒れたくせに元気なこった」
クウェインは欠伸をしたままテントから出てきてノードの練習を見守っていた。笑いもせずがっかりもせずただただ見守った。
「レイ、イメージするんだ。今はノードの発動に力を入れているがどういうノードを出したいのかを鮮明にしてみろ」
「そう言ったってよ、ふんって力入れてるだけでノードがどうやって出てるのかもイマイチ分からない」
「目を瞑ってもっと集中だ。そしたらどうすりゃいいのか身体が応えてくれる」
手足の動かし方を説明するのはとても難しい。ましてや指の動かし方なんて自分でも理解が出来ない。それと同様にノードを使えるクウェインの説明はレイにとって参考にならない。
これも戦いながらしばらく時間がかかるな、とレイは少し先延ばしにしていた。
そう考えている時にテントからサラマンダーの一員が出てきた。
「クウェイン、レイ。昨日行けなかった2層へ出発する事になった」
「いつ?」
「今日だ」
――――――――――――――――――
サラマンダーの中には2層自体初めて来る人も多くいた。
その前にしっかりと計画を練られて進行する予定であるが、今回は2層の探索のみで3層へは行かない手筈となった。
「3層は危険が満ちている。まずは暗闇に慣れながら気配で敵の位置を察知して戦う練習だ。陣形も決して崩さずに向かう」
ボルケーノは2層の地図と団員の配置図を見せた。
「先頭は俺と索敵班、敵が見えたらまず教えろ。中央前は前衛ジョブが担当。中央後ろは後衛ジョブと治療班、最後方は副隊長のマグルマだ。その状態のまま真っ直ぐ進行する。Uターンしても陣形は崩すな」
そしてボルケーノは別で用意した紙を見せる。そこに描かれていたのは襲い掛かってきた気持ちの悪い人面蝙蝠だった。
「2層にいる敵はとにかく音に敏感な連中が多い。あの気持ち悪い蝙蝠はスカルデビルと言って音と血の匂いで寄ってくる。普通に歩いてりゃ洞窟の上に潜んでいるだけの臆病者よ。音が大きいと逃げ出す習性があるから戦闘中は基本寄ってこないが血には注意だ。怪我したら直ぐに治療班の所へ向かえ」
そしてもう一枚紙を見せた。そこには背中に鉱石が刺さっている様に見える蜘蛛がいた。
「今回のターゲット、クリスタルスパイダーだ。こいつを倒すと背中にある鉱石をドロップする。加工すれば武器にもなるし金にもなる。火に弱い性質があるからこいつの対処は後衛ジョブが担当だ」
後衛ジョブの炎使いたちは大きな声で返事をした。頼もしい事この上ない。
「状況判断は俺が下す。逃げろと言ったら何があっても逃げろ。絶対に俺より前には来るんじゃない。では行くぞ!」
「「おう!!」」
いざギルド【サラマンダー】による2層探索が開始された。
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