3章 仕事編

1話 初仕事と暗い影

 これは夢だってわかっている。

 わかっていれば、いつでも逃げられるのだ。


 マーロウの森の奥。腐葉土の積もった、クライド・バックワーズに泥団子をぶつけられた場所。そこには苔むした大きな岩が横にあり、この岩のせいで私は行き場をなくして泥をぶつけられていたのだ。


 今回もやはり幼き日の自分が静かに泣きながらしゃがんでいた。いつもクライドが立っていた場所には、女性とも男性とも識別できない人影がいた。長髪のその人は幼い私ではなく、私を見てこう言った。


「本当に申し訳ないことをした。あなたには大切な役割があるのに」


 そういうとその人は幼い私を指さすので、私はそのうずくまる背を見た。


 さすが、夢なんだろう。


 その顔はこちらに穴が開きそうなくらい見つめてくる。黒の瞳が誰かを思い起こさせる。


「あなたの疑問の答えは、あなたの涙がたどり着いた場所に眠る」


 私は夢が浅くなっていくのを感じた。そろそろ目覚めるだろう。するとその人物はいつの間にか距離を詰めて私の手を掴んだ。

「待っている」

 夢のはずなのに、手首が軋んだ気がした。


 目が覚めて、手首に掴まれた感覚が冷たく残っていた。なんだったんだろう。 


 朝食の席でエドガーにそのことを話すと「ほう」とぼんやりとした返事。眠そうですね、と指摘したら、国王から読書課題を出されて寝不足です、と返ってくる。


「バックワーズの悪夢に変化が出たのは喜ばしいですね」


 エドガーはフォークで豆を拾い上げ薄く開けた口の隙間にそれを運んだ。

「私は夢占いには疎いのですが、気になるならマーロウのその場所へ行ってみるといいかもしれませんね。とは言え、マーロウに行く予定を立てられればの話ですが」


 エドガーは横に控えていたディラティに一枚の紙を手渡し、若き女中頭はそっと歩いてその紙を私に両手で差し出した。私はそれを両手で受け取ると紙面に視線を滑らせた。手書きではない、本のように印刷された文字の羅列に身が引き締まる。


「今日からのあなたの仕事内容です。おそらく王都からしばらくは動けないかと」


拝啓サニー・ポーター殿

貴殿の風の魔女としての才を、我が国の為に駆使していただくことが決まり、国王としては大変喜ばしく思う。

 ついては以下の者たちの安否確認を最優先で調べていただきたい。

 現時点で行方不明者の数は千七百五十三名を推定している。

尚、詳細は後にそちらへ運び込まれることとなっている。

イディアナ国王 名称省略 ダニエル


 丁度クリアアイズの家の玄関が叩かれ、使用人たちが扉を開けると、木箱を抱えた軍人二人組が入ってきた。彼らはエドガーに挨拶するとどこに置けばいいかを尋ねた。結果、木箱から取り出された紙の山は暖炉の部屋の机に置かれた。


「……行方不明者だけでも結構いますね……」

 私が感想を口にすると、エドガーは声だけ笑った。

「焦る感情ですら、あなたの探索力に拍車をかけてくれるのですから、要領よく使ってしまいましょう」


 空の木箱を抱えた軍人二人が去ると、玄関によく日に焼けた顔がひょっこりと現れた。


 軍服に勲章をこれでもかと付けたその人は、歯並びの良い白い歯を見せてニィッと笑う。極東地方特有の黒髪は短く刈り込まれ、キリッとした表情でありながら余裕のある雰囲気。どこか人懐こい印象があった。身長はエドガーより小柄だ。

 エドガーが、無表情を崩さずに尋ねた。

「将軍、今日もお暇なんですか?」

 しかし相手はエドガーの言葉をものともせず、私の方へ歩み寄ってきた。

「サニー・ポーターって君か! 俺はユウマ・スズキ、将軍だ。クリアアイズとは寄宿学校からの同期だ。これから仕事で顔を合わせるだろうから、よろしくな、サニーちゃん。ユウマさんて呼んで」

 

 にっこり笑いながら手を差し伸べてくるが、その手を握り返す間もなくすかさずエドガーがその手を払いのけた。私はあっけにとられた。


「サニーに触らないでください、あなたの俗世まみれな価値観が移るでしょ」

「おうおう、お前も相変わらず潔癖ですなあ。触ったぐらいで移るんだったら同じ空間にいるのも禁止されそうだ」 


 以前も思ったけれど、この二人の距離感は近い。ユウマさんは書類の山を眺めるとすぐそばにあったソファに腰かけ足を組んだ。そこへディラティが茶器を運びお茶を差し出す。私は隣にいるエドガーに尋ねた。


「寄宿学校時代のエドガー師匠ってどんな感じだったんですか?」

 私の質問にエドガーは黙っていた。どうも自分で答える気はないらしい。それを見てとったユウマさんは口を開いた。

「まあ、今とあまり変わらないな。変わったことと言えば背丈くらいか? 昔からこいつ寡黙で無表情でさー。ただ寝てる時だけすっごい良い顔で笑うんだよ。ああ、俺、こいつと同室だったの」


 面白半分に話を聞いているとこんなことが聞けた。

 寄宿学校の毎日はほぼ訓練ばかりで、寝る頃にはみんな泥のように疲れている。二段ベッドが三つ入った狭い部屋に寄宿生である男六人が過ごす夜。

 大体それぞれ好きなことをしてベッドに寝そべっているらしいのだが、エドガーはいつも早いうちに寝ていたという。そして彼は寝ながらよく笑って同室の寄宿生を気味悪がらせていたらしい。だから同室の寄宿生がひとり、またひとりと寄宿学校を辞めていった、と。


 その話にエドガーは首を傾げた。


「私が知っているのと理由が違いますね。私は将軍の寝言が怖すぎてみんな辞めていったんだと」

 今度はユウマさんが首を傾げた。

「はぁん? なにそれ。俺、どんな寝言を言ってたって?」

「え、これ同期生の間で結構有名な話ですよ。将軍、寝ながら笑い『殺してやる』と。頭上周りに鬼火が見え、同室の訓令兵たちは泣きながら教官に直訴してましたよ。あの部屋おかしいです、って」

「まー、しょうがねえよな。不可視の国の住民が俺を放って置かないのだよ、クリアアイズくん」


 私は今の話を頭の中で整理した。つまり寄宿学校の一室に、寝笑いするエドガーと寝脅しするユウマさんがいたことになる。辞めていった同室の寄宿生たちの気持ちもわからなくもない。

 ユウマさんがそんなことは知ったこっちゃないと言う調子で続けた。

「お前だって寝言でよくペリペリ言ってたけど、なに? ペリペリって?」


 ペリウィンクル。


 その言葉が私の頭に浮かんだ。エドガーは無表情で告げた。

「夢の代わりに幸せな記憶を再生していたんでしょう。それくらいしか楽しみなかったですし」

「しあわせな記憶……なんかお前についてるっていう、ここぞと言う時に現れる最強の女神の話だっけか?」

 おそらく私が……いつの間にか神格化されている。畏れ多い。


「まあ、なんにせよあれから月日は流れてだな、俺らも腐れ縁ってやつだな。お前こんな可愛い弟子見つけて、羨ましい! 俺なんて大狐の幽霊や鬼に好かれて、人間は怖がるから彼女なんてできた試しがないぜ」


 私が疑問に思っているのが顔に見て取れたのか、エドガーが捕捉した。


「将軍は目に見えない世界の住民と契約なしで力を借りれる、異例の特異体質なんです」

「この体質のおかげで将軍やれてるけど、力の代償って大きいよな……」

 ユウマさんは深いため息をついた。さて、と彼はつぶやき紅茶を空にして立ち上がった。制服の勲章がしゃらりと音をたてる。

「サニーちゃん、仕事、最初はゆっくりで良いから。また時間が空いたら様子見に来る。あ、あとこれ」

 そう言ってユウマさんは両掌に乗る少し大きめの箱を差し出した。彼は箱の蓋を開け、中には金属製のボタンがたくさんついた機械のようだった。エドガーがそれを一瞥した。

「小型のタイプライター、ですね」

「国王が使えってさ」

 将軍はこちらにウインクをとばした。そしてエドガーの肩に手を乗せニヤっとする。

「軍師は休暇中分の仕事が溜まってるんだけど、俺が他に回しといた。午前中はタイプライターの使い方をサニーちゃんに教えとけって、国王が」

「……はぁ」

 エドガーは怪訝そうに、それでも頷く。将軍である男性は気さくにじゃあな、と言ってあっという間に玄関から消えた。国王様のご趣味を知っているので、私はちょっと気まずかった。


 エドガーと私を意図的に二人っきりにさせるなんて。


 静かになったクリアアイズの家に、いや、私とエドガーの間に沈黙が立っていた。エドガーは静かにため息をつき、無言でタイプライターの箱を取り上げ、ソファに座った。

「サニー、どうします? これの使い方、知っていますか?」

 私は首を振って否定する。

 エドガーは少し目元を緩めて、自分の隣の席を手でポンポンと叩き座るように促した。気恥ずかしさから小走りでエドガーの隣に座る。エドガーは箱の中身を白のグローブをした手で持ち上げた。どうも重量があるのか、テーブルに置いたときに鈍い音がした。

 タイプライターをしげしげと眺めたエドガーはまたため息をついた。

「これは……従来のものよりも大きさが小さいので、どうも国王があなたのために用意させたもののようです」

 一拍、エドガーは黙った。

 そして堰き止めていた水が溢れるように喋り出した。


 サニーが家で仕事するのがわかっていたようなタイミングの良さでこういう気の利いた贈り物を用意するのが腹が立つんですよね。しかもサニーの手の大きさを知っているというのはどういうことなんです? キーボードもそこまで重くならないように工夫されて作られているのが憎たらしい。この機械がサニーを傷つけるようなことがあれば即焼却炉に放り込んでやります、とエドガーが感情を押し殺した囁き声で呟いた。それも怖いくらい早口で。


「エドガー……。その……考えすぎでは?」

「いえ。国王も私も思考の順序の癖や情報量が違いますが、結局は同じ結論に至る……表現は粗悪ですが、彼と私は同じ穴の狢なんです」

 国の政治を司る国王と、国王軍で策を企てる軍師。その表現は悪人に使われるものであって、国民のために戦う人たちに使うには、ふさわしくない気がした。

「エドガーは、悪い人ではないですよ……」

 黒い瞳がこちらをそっと振り向いた。今回は私も負けじと見つめ返す。だけどやはり心の奥を覗かれているような感覚になる。私はどうしてだか視線を逸らした。続くエドガーは小さな笑い声。

「……私にとって、サニーがそう言ってくれることに大きな意味があるんです」

 真実がどうであれ、とエドガーは付け加える。

 そこから彼はタイプライターの使い方を一通り教えてくれた。


 説明しながらエドガーは私に実際に打鍵するように促した。私が人差し指でキーを押すとガタリと音がして自分が押したキーと同じ文字が印字される。


 激しく嬉しくなった。


 両方の人差し指でエドガーの説明を聞きながら作文をしてみる。するとベルが軽い音を立てるのでエドガーがキャリッジリターンと呼んだレバーを押す。


 印字された紙には〈私はサニー。ただの農民でしたが、魔法の使える白ねずみにタイプライターを教えてもらいました。これこそ魔法です〉と書かれていた。

 その紙に目を走らせたエドガーは私に断りを入れて打ちにくそうにタイプライターを入力する。


 ガタガタとタイプライターが音を立てていたかと思えば、私の文章の下にこう付け加えられていた。


〈白ねずみは物覚えの良い弟子を職場で自慢する予定です〉


 私は微笑んだ。打った本人は相変わらず冷静な面持ちだけれど、こう認めた。

「まあ、良い贈り物ですね」

 エドガーはそれだけいうと、紙の山に視線を滑らせた。

 机の上の紙の山はそれぞれ紐で四方から束ねられ、一番上には黄色の紙に番号が書かれていた。エドガーは一と書かれた山を見つけると、紐を解いた。上にあった紙を彼は持ち上げて目を通す。

「国王は、行方不明者の安否確認及び居場所が知りたいそうです。おそらくこれは、あなたにとって辛い仕事になると思うんです」


 エドガーの言葉に私は微笑んでみせた。魔法で人を探すのは何度かやっている。


「大丈夫です。私にだって仕事ができることをお見せします!」


 やる気旺盛な私とは相反して、エドガーはなんともいえない雰囲気を醸し出していた。

 しばらくこちらを見たかと思えば、ためらいの見える所作で一枚の紙を差し出す。私は紙を受け取りその紙面に視線を走らせた。


 とある女性の名前と年齢、背格好、最後の目撃情報とその日付が書かれている。

 エドガーは迷いに迷った挙句、口を開いた。

「サニー、やはり少し説明させてください、その方が」

 しかしエドガーが言い終えるよりも、私が魔法を使う速度の方が速かった。


 目の前が暗転して映像が広がる。絶え間なく水の揺らめく音がした。そこはどうも光の差し込む水の中のようだ。私は疑問に思った。水の中……? 


 次の瞬間私は自分の見たものの恐ろしさに身体中が拒絶反応を起こしているのを感じた。


 途端に身体を包む温もりを感じ、視界が突風で乱れる暖炉の部屋に戻っていた。


 エドガーの声が私の名前を囁いた。囁かれてやっと気がついたが、彼は私を抱きしめていた。


 恐怖で体が硬直していたことに気づき、私はふと深く息を吸った。瞑想ほどの効果はないが、徐々に恐怖が引いていく。部屋の中の風も止み、あちらこちらに紙がちらばっている。そして衝撃は口から飛び出していた。


「水の中に……青白くなった女性の体が、鎖に繋がれて……」

 水の冷たさ、亡骸の表情から伝達する彼女の孤独、絶望。死して尚置き去りにされる悲しみ。それらが胸の中に渦巻いた。希望のない冷たさが心に充満している。


 しー、という柔らかな音がして、私はそれ以上喋るのをやめた。私を抱きしめるエドガーの腕に少し力が加わる。頭部に温かい手が触れる感覚がした。私は目から涙が溢れ出るのを抑えられなくなった。


「……これが、あなたが日頃我慢している、苦しみ、なんですか?」

 しゃくりあげる私の言葉に、エドガーは黙ったまま私の頭を抱きしめ続けた。

「いや、これよりずっと辛いに決まってる……」

 私がそう呟くとエドガーは私を解放して、私の頬を伝う涙を素手で拭った。

「……辛さとは誰かと比較できるものではありません。当人が辛いなら辛いのです。サニーは自分以外の感情を多く受け取ってしまうのかもしれませんね……。私がいて良かった。国王が私に半休をくれた理由がわかりました」


 エドガーは私の背を撫でながら納得したようだった。気がつけば、ディラティがお湯の入った洗面器とタオルを持ってきていた。エドガーはタオルを浸しそれを絞って広げた。

「これで顔を拭いなさい。落ち着きます」


 そこへ玄関扉を叩く音がした。私は顔にタオルを被せていたけれど、声で相手が将軍、ユウマさんであることがわかった。


 エドガーとユウマさんの会話は小声だったが、私の耳には風の魔法のせいなのかはっきりと聞こえていた。


 ……おい、サニーちゃん大丈夫かよ。いえ、大丈夫ではないですが、サニーの記憶の断片からするとどうも一連の件は海賊とやはり契約派の仕業だと思われます。うわ、最悪のパターンだな。早く手を打たねえと。わかってます。でもまだサニーが……。


 その会話に私はタオルを手で取ると握りしめた。


 そうだ。これは、仕事だ。この国を守るための仕事だ。

 エドガーも以前言っていた。

 もし、この役目をするのが私であると知っていたなら、私に与えなかったと。

 それは、エドガーにとって私が大事だからに他ならない。

 でも、いい加減、守られるだけではいけない。

 私に与えられた力は、才能は、使うためにあるのだ。


 私は無理やり微笑みを浮かべた。

「私なら、大丈夫です!」

「……何が大丈夫ですか。泣き腫らした目元で微笑んでも、心が傷ついた事実は消えません」


 エドガーの言葉が過保護にしか聞こえなかった。私が唇を噛んだのを見たのか、エドガーは何か言いかけて辞める。見かねた将軍が、私に向き直った。

「サニーちゃん。仕事を続けてもいいが、無理はしちゃいけない。無理したら体が動かなくなって力も使えなくなる。今ほどこの国にとって君の力が継続的に必要な時期はない」


「この国は今どういう状況なんです……?」

 軍人二人は顔を見合わせた。エドガーの表情は険しい。

「……サニーはもう軍の一員ですから話します。このイディアナ王国は侵略されるのを待っている状態です。この国は大陸で、海に囲まれています。海岸沿いには私の魔法を編み込んだ海賊よけの防御壁があるんです」


 私はエドガーの説明を飲み込むのに時間がかかった。


「海賊?」


 やっと飲み込んで出てきた単語がそれだった。


 エドガーは視線で私の表情をすみずみまで観察していた。記憶しようとしている時の熱心さとは違い、私が情報に耐えられるかを観察しているようだった。


「そう、海賊です。ここでいう海賊は海にいる悪ガキではない。息をするように残忍なことをやってのける凶悪な犯罪者の集まりです。彼らの侵入を許せばマーロウ規模の村など一晩で血の海です」


 エドガーの言い方は淡々としていた。淡々としているが故に、言葉に無駄な感情という装飾がなく、理解に直結する速さがあった。

「魔女狩りは、海賊たちが海の向こうから持ってきた先天性魔法、つまり違法魔法の拡散によって起きた悲劇です。見えない世界の住人と契約した感情の歯止めが効かなくなった者たちによる、残虐極まりない暴動。それがこの国を、そして私たち、魔法の系譜に載る人々を恐怖と惨めさ、苦しみに突き落とした原因です」


 私たちにとっても直接関係のある脅威だと、エドガーは言いたいのだろう。


「先ほどサニーちゃんが調べてくれた女性は違法魔法の契約をした容疑がかかっていたんだ」


 将軍は胸元の勲章を指先でいじりながら難しい顔をした。エドガーは一瞬そんな将軍を煩わしげに一瞥して私に視線を戻した。


「 しかし彼女が契約時に差し出したものが感情ではなかったのでしょうね。以前彼女の記憶を見たのですが、記憶が途切れ途切れで違法契約の証拠不十分。それで動向を密偵部隊が観察していたのですが、密偵部隊が行方不明に。しかし今思えばこうなることを見越しておそらく記憶を代償にした、もしくはされた……」


 私が、誰にです? と聞くとエドガーから海賊でしょう、と静かな声が返ってきた。将軍が眉間に指を当てた。


「まずいのは、彼女が有権者の娘で昔から社交界に出入りしていたことだ。国の内部の情報をある程度握っていただろうからな……」


 将軍は腕を組んだ。


「サニーちゃん、さっき見た遺体がどこにあったかわかるかい?」


 私が魔法に尋ねると、それは驚いたことにマーロウの森の西にある海岸だった。とはいえ、その海岸はほとんど崖で歩くような場所はない。風の吹き荒ぶ激しい海なので遊ぶ人もいない。


 エドガーが広げた地図に、私は指で示した。


 それを見た軍人二人は驚いたようだった。将軍が苦々しげに囁く。

「……思っていた以上にひどいな」

「この領域は防御壁の内側ですね」

 エドガーは机に置かれた紙を拾い上げた。

「彼女が姿を消したのは丁度一ヶ月前……」

 拾い上げた紙としばらく睨めっこすると、サニー? とエドガーは私を見た。

「今晩からマーロウに行きませんか?」

Closed.

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