【3.デートに誘うには】

第27話

週明けの夕方

倉沢は病棟で藤森に捕まった。


「倉沢、尾崎とは会ったんか」


「え?あ、はい」


「お!マジか!」


藤森は倉沢に椅子に座るように促した。

病棟師長が何事かと目の前に座る2人を交互に見た。


「飲みに行っただけですよ」


「ほんとにそれだけ?」


「それだけです」


「え?進展ないの?」


倉沢が考えている間、藤森は病棟師長にペラペラと事情を話す。

話を聞き終えた病棟師長は関心ありげに倉沢に視線を向けた。


「ああ、でも、また会えるみたいです」


藤森が身を乗り出す。


「お!デートにこぎつけたか!」


「いえ、今週尾崎さんの病院のドクターがうちの小児科に講演しに来るじゃないですか。一緒に来るみたいで」


「なんだよ」


藤森はシラけたように椅子の背もたれに寄りかかる。

病棟師長は頬杖をつきニヤニヤしながら倉沢に訊ねた。


「可愛い子なの?」


倉沢は何かを思い返すように間を置いてから、照れたように笑って頷いた。


「はい、とっても可愛いです」


「えっ」「え…」


藤森と病棟師長は呆気に取られた。

2人で顔を見合わせる。


「師長見た?倉沢が笑った」


「ええ、見ました。申し送り事項に加えなきゃ」


「あの飲んだくれ女が倉沢にこんな顔させるのか…あれー?でも尾崎のこと別にタイプじゃないって言ってなかった?」


「タイプです」


「別にって言ってた!」


「上司に言うことじゃないですから、ね、倉沢先生」


「そうっすね」


「水くさいなー!」


藤森がからかうのを病棟師長が止める。

倉沢はその様子を黙って見ながら、ハルのことを思い出していた。


「倉沢、ニヤけてんぞ」


「藤森先生はそろそろ仕事に戻ってください。倉沢先生は次はLINEくらい交換しなさい」


藤森は「へいへい」と返事をしながら渋々立ち上がり、回診に向かった。


「そうっすね…はい」


倉沢もそう返事をしながらパソコンに向かって座り直しカルテを開いた。

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