第18話
倉沢は頬杖をつきながらパソコンの前に座っている。
入院患者の採血結果を開いたまま、数値は全く頭に入らずにいた。
見かねた藤森が倉沢の肩を勢いよくポンと叩く。
「倉沢」
「あ、はい」
倉沢は少し驚いて振り返る。
「どうだ、次のアポは取れたか」
「なんです?」
「すっとぼけるのもいいとこだな」
倉沢はなんのことだかさっぱり分からず首を傾げた。
そういえば今日はハルにも「からかうから」と言われ混乱した。
そこで藤森がハルのことを言っていることが分かった。
「藤森先生」
呆れて立ち去ろうとした藤森を呼び止めた。
「なんだ?」
「…どうしたら会えると思いますか」
倉沢の質問に堀内は待ってましたと言わんばかりに口角を上げた。
「この間みたいな博打はよろしくない」
「…まあ、そうですね」
「内科ブロックにいるクラークは尾崎の元同僚で友達らしい」
倉沢は今日、ハルに手を振っているクラークを思い出した。
自分がハルが受診に来ているか訊いた、あのクラークだ。
藤森は再び、今度は軽く倉沢の肩をポンポンと2回叩いた。
「行きつけの店を知ってるかもしれないな」
16時半過ぎ
外来診療は終わり、リコは1人で内科ブロック受付の片付けをしていた。
倉沢は静かに声をかけた。
「お疲れさまです」
「お疲れさまでーす…あ」
顔を上げたリコは倉沢の姿を見て、表情を引き締めた。
医師だからではなく、昼間、ハルが受診に来た時のことを思い出したのだ。
「消化器内科の倉沢です」
「存じ上げてます。クラークの藤崎です」
「尾崎さんの入院主治医をしてました」
「ハルは私の大事な後輩で、大事な友達です。どうしたんですか?」
「尾崎さんに会うにはどうしたらいいですか」
「はい?」
淡々と突拍子も無いことを言う倉沢に、いよいよリコの声が裏返った。
倉沢は言葉を探すように、俯いた。
リコはその様子を見て倉沢の言葉を待った。
顔を上げた倉沢はようやく口を開く。
「尾崎さんに会いたいです」
ストレートな言葉にリコは今度は言葉を失った。
大きく目を見開き何度か瞬きをしたあとようやく声を絞り出した。
「なんで?」
「タイプだからです」
「どういうこと?」
「尾崎さんの行きつけの店とか知ってますか?」
「ちょ、ちょっと待って」
リコはようやく頭が回るようになったかのように倉沢を制止した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます