第3話

「美味しそうだな」


「春樹と星香の好きなデミグラスソースよ」


未央が、淡いピンク色のルージュを引き上げた。テーブルには、未央が作った、ハンバーグとスープ、ポテトサラダが並んでおり、真ん中には、俺の作った、星香が大好きなオムレツが、大きなプレートに乗っかっている。


「春樹って、本当オムレツ上手よね、いつも見てるのに同じように作れない」


未央が、綺麗な切長の瞳をきゅっと細める。


「何?悔しいの?」


「当たり前でしょ!星香の好きなもの、私だって、春樹がいない時でも作ってあげたいの!」


「変わんないな、どっからくんの?その負けず嫌いと完璧主義」


クククッと笑う俺を見ながら、未央が痛くない程度に俺を肘で突いた。俺は、ふわりと未央を抱きしめた。


「ちょ……春樹!」


「何?」


「何って、言わなきゃわからないの?」


未央が頬を染めながら、一瞬だけ俺の瞳を見てすぐに逸らす。


「勘のいい未央なら分かると思うんだけど」


俺は、そのまま唇を未央の耳元に寄せた。


「いつもありがとう。今日も部屋で待ってるから、早く返事聞かせて」


未央は真っ赤になったまま、目の前の料理を見つめている。


俺は、これ以上未央を困らせないように、するりと腕を離した。

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