第2話

未央には、本当に感謝してもしきれない。


会社では秘書として完璧と言えるまでの仕事をこなし、星香の帰宅に合わせて帰宅し、食事を作る。


ロスから帰国した当初は、此処へ通いながら、今まで通り星香の面倒を見て、夜は、自分だけが帰るワンルームを借りると言っていた未央を、俺は何度も説得したが、未央は、頑なに首を縦には振らなかった。


『星香が、私を母親だと思わないように。星香のお母さんは、この世に明香さんだけだから』


そう言って、夜一人で帰ろうとする未央を、泣きながら引き留めたのが、星香だった。


『みおちゃん、かえらないで!みおちゃんまでいなくならないで』


未央が、涙を溢す星香を抱きしめた。


『どこにもいかない。星香の側に居るから……』


滅多に泣かない未央が、星香を抱きしめたままま、星香に気づかれないように涙を拭ったことが、俺は忘れられない。


それ以来俺たちは、ロスにいた時と同じように三人で暮らしている。今は、空き部屋になっていた、冬馬の部屋を未央が使い、明香の部屋を星香が使っている。

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