第12話

カフェでのバイトが終わり、従業員出入り口を出てすぐに、僕は、花音から声をかけられ驚いた。


「あれ?どしたの?今日は遅番シフトだから会えないって言ったよね?」


「急に、英太に会いたくなって……」


目の前の花音は、間違いなく花音なのに、何処か違和感を感じるのは何故だろうか。


「ねぇ、お腹減っちゃった」


花音の声が、いつもよりも少し鼻にかかっている。


「じゃあ、僕が、オムライス作るよ、デミグラスの」


「アタシ、ケチャップがいい」


僕は、ゆっくりと、繋いでいた花音の右手を

離した。


ピタリと足を止めた僕に、花音ではない花音が、ケタケタと笑う。


「バレた?でも、今日から、アタシが、荒木花音だから」


「その声、いつも花音と一緒にいた美咲?とかいう人だよね。今のどういう意味?」


僕の中に、黒い感情が揺らめいていく。


「怖い顔。ずっと花音になりたかったんだよね、だから花音そっくりに整形して、これからは、花音として生きていくの」


光悦とした表情を浮かべながら、美咲が、にんまり笑った。


「あ!イイコト教えてあげる。花音ね、さっき、不慮の事故で死んだわよ。あ……間違えた。死んだのは美咲ね」


ーーーその瞬間だった。美咲の顔が、あっという間に驚きに変わる。

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