第5話

「ええっと……いいんですか?仕事先でこんな……」


「あ、友達って言って、バイト上がってきたから大丈夫。僕のこと気にしてくれるなんて、優しいんだね」


「いえ、優しくなんかないです」

私は肩をすくめた。


「僕は、古谷英太ふるやえいた。英太でいいよ。同じ大学の4回、大学で、君を見かけたことあって」


驚いた私を見ながら、英太が笑う。


「名前おしえてよ」


ピーチスムージーをストローから吸い込みながら、上目遣いで英太が私に訊ねた。


荒木花音あらきかのんです。大学3回です」


「花音か、いい名前」


「飲む?」


差し出されたピーチスムージーを一口もらう。


「……美味しい」


「でしょ、おススメだよ」


子供みたいに口を開けて笑った英太は、さっきの店員とお客との関係の時よりも、ずっとフランクで、何故だか、誰にも言えない心の膜を勝手に剥ぎ取られるような、何とも言えない感覚があった。

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