第11話
「ごちそーさま」
その声に、僅かに体がビクンと跳ねた。涼真の恋カレーは、綺麗になくなっている。
「……うん」
一瞬だけ涼真と視線を合わせたが、涼真はさっと立ち上がるとカレー皿を流し台へと置き水を流した。私も最後の一口を食べると、涼真の隣に並んで、カレー皿を流し台に置く。
「あとで洗うから置いといて」
「今日も美味かった。いつもありがとな」
いつもの恋カレー、いつもの涼真のお礼の言葉、いつもの涼真の笑った顔。それなのに、私の瞳からはついに涙が転がった。
「え? おい、どした? 」
「……見ないで……なんでも……ない」
涼真の前で泣くつもりなんて、さらさらなかったのに一度転がった涙の雫は、引っ込めたくても引っ込まない。
「ひっく……ぐす……」
「ちょ……マジで泣くなよ」
涼真が慌ててティッシュ箱を持ってくると私に手渡した。
「香恋、泣くなって」
「だって……」
やっぱり恋カレーのおまじないないなんて嘘だったんだ。そもそも誰もしたことないおまじないを選んだ私もバカだったのかもしれない。ううん、一番バカなのは、涼真との関係が壊れるのが嫌で自分の気持ちをちゃんと口で伝える事なく、おまじないに頼った私自身だ。
「なぁ……香恋こっち向いて」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます