第10話
「香恋?どした?」
(やばい、見すぎたっ)
「えっ……と、美味しいかなぁって」
涼真が、スプーンを持ち上げると歯を見せて笑った。
「美味いに決まってんじゃん。ほら、もうなくなりそう」
「う、ん……良かった」
涼真の恋カレーがお皿から、なくなったらどうなってしまうのだろうか。私はまだ、ふた口しか食べてない自分の恋カレーを見つめながら小さなため息をを吐き出した。
「おい、元気ないじゃん、何かあった?」
涼真が首を傾げている。
(何かあったどころじゃない。もうすぐ私の初恋の行方が決まるのだから)
「べ、別にちょっと考え事」
「あっそ」
涼真が最後のハート人参をルーと一緒に掬ったときだった。涼真がカレー皿の横に置いていたスマホが鳴る。涼真はスマホの液晶画面をチラッと見たが電話に出る気配はない。
「……いいの?食事中だけど、親いないし出てもいいよ?」
涼真は困ったような顔をしながらも電話には出ない。私は嫌な予感がした。電話の相手はあのサッカー部のマネージャーの女の子なんじゃないだろうか?
「いや、いいよ」
「……そだよね、彼女……との電話、私の前じゃしにくいよね」
「そんなんじゃねーよ。果帆」
涼真は、黙ったままスウェットのズボンにスマホをねじ込んだ。果帆からの電話だなんて絶対嘘だ。私は瞳に涙の膜が張りそうで、慌ててカレー皿に視線を移すと、黙々と食べていく。
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