第11話
私は急いで投函ボックスの前に戻ると『この手紙をキミへ』と書かれた手紙を持って君江のいる病院へと駆け出した。
(おばあちゃんに会いに行くってどういうことだろう)
病院へ向かう足は駆け足だ。
(どうしよう、あの男の子が死んでもおばあちゃんに未練があって手紙のやり取りをきっかけに、おばあちゃんをあっちの世界に連れていこうとしてたとしたら……)
嫌な汗が額に纏わりついて、喉がカラカラになってくる。
──プルルルッ……プルルルッ
病院のエントランスを潜ろうとした時だった。制服のスカートの中のポケットが震える。私はスマホを引っ張り出して液晶画面をみて凍り付いた。電話の相手は父だった。私はスマホをスワイプするとすぐに聞こえてきた父の言葉に涙が溢れた。
そこから病室までどうやって歩いていったの記憶にないが、気づけば私は君江宛の手紙を握りしめて病室の扉前に立っていた。震える手で扉をそっと開ける。そこには男の子からの手紙を抱きしめたまま君江が安らかに眠っていた。
「お……ばあちゃん……」
目の前の現実がうまく心で消化しきれない。この間まで嬉しそうに手紙のことを話してくれていたのが嘘みたいだ。もう大好きだったそのあったかい掌で頭をなでてくれることも抱きしめてくれることもない。
目の前が歪んで言葉にならない想いは、雫となって無数に落ちていく。私はその場に崩れ落ちると身体の水分が全部無くなるほどに声をあげて泣いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます