第12話

数日後、君江の葬儀が無事に終わり私はひとり部屋で布団にくるまっていた。


「私のせいだ……おばあちゃんに手紙のこと話したから」


もし私があの手紙のことさえ君江に話していなければ、まだ君江は生きていたんじゃないだろうか?


「野乃花、入るよ」


ドアが開いて父が部屋に入ってくる。


「もう少ししたら食事にするから今日は降りてきなさい。おばあちゃんも心配するからね」


(そんなことない。もしかしたらおばあちゃんもあの男の子に連れて逝かれて私のこと怒ってるかもしれない)


私は布団の中から小さく首を振った。父がため息を吐き出すと、ベッド脇に腰かけた。


「野乃花……おばあちゃんの遺品整理をはじめてね。手紙がたくさん出てきたんだ。いくつか中身を見せてもらったがどうも手紙部の時のもののようでね。此処において置くから野乃花が持っていて欲しい」


私は目だけ布団から出すと小さく頷いた。父はそっと私の頭をひと撫ですると静かにドアを閉めて出ていった。私は枕元に置かれた手紙の束に視線を移す。


(おばあちゃんの手紙……そういえば、あの男の子との手紙には何て書いてあったんだろう)


私は起き上がると手紙の束を一枚ずつ確認していく。黄ばんでいるものは後回しにして真っ白な封筒だけを選んで机に広げた。


「あ……れ?」


『この手紙をキミへ』と書かれた手紙が二通。そして『この手紙をあなたへ』と書かれた手紙が二通。


「どうして……おばあちゃんの手紙、あの男の子が持って行ったはずなのに」


私はスカートのポケットに入れっぱなしになっていた君江にわたすことが出来なかった『この手紙をキミへ』と書かれた手紙を取り出すと四通の手紙の横に並べた。


(全部で五通……)


私は初めて君江に届けた手紙をそっと広げた。鉛筆で大きめの文字が並んでいる。

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