第10話
翌朝、私は再び投函ボックスの上に手紙を立て掛けた。すると放課後、手紙の仕分けにやってときには手紙はなくなっていた。
そしてあっという間に二週間が過ぎた。
「今日もまだ届いてないか」
私は配達を終え投函ボックスをのぞき込むが空っぽだ。今日か今日かと君江の想い人だった男の子からの返事を指折り数えて待ち続けているが手紙は一向に届かない。私は、いつものように図書館の隅に座ると明日の配達分の手紙を準備していく。
(もうこないのかな……そろそろおばあちゃんに一度報告しに行こう)
今思えば君江からも二回目の手紙を預かった際、返事がきたら教えて欲しいとは言われなかった。もしかしたら、君江の書いた手紙で二人の手紙のやり取りは終わったのかもしれない。
その時、図書館扉前に気配を感じると共にカサっと紙が擦れる音がする。
──来た!あの子だ!
「待って!」
私はすぐに扉を開け放つとすでに小さくなっているユニフォーム姿の男の子を追いかけた。
「お願い!待って!」
男の子はあっという間に廊下の角を曲がっていく。私は全速力で走って角を曲がると更に大きな声を出した。
「今日おばあちゃんに届けるからっ!」
追っていた男の子がぴたりと足を止める。
そしてゆっくり振り返ると男の子は歯を見せてニカっと笑った。
「キミに伝えて。会いに行くと」
「え?……あっ……」
男の子の声は穏やかでどこかほっとするような不思議な声だった。そして言葉を紡ぎ終わると男の子はふわりと煙のように消えていった。
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