第2話 乙女ゲーム「Incompetent system online 1.9.3」
「Incompetent system online 1.9.3」
直訳すると「オンラインの無能なシステム 1.9.3」。
名称が少し過激的なものの、どこにオンラインが関係あるねんと思うところはあるものの、内容はごく普通の乙女ゲーム。
だけど、少し他のゲームとは違う部分があった。
始まりと終わりはほぼ統一されているものの、プレイするたびにストーリーがほとんど変わってしまうのだ。
元々敵だったキャラクターが何故か主人公の攻略対象になったり、ラスボスこと魔王の中身が変わったりと、毎回キャラクターの役割が変わる。
だからこそ、このゲームは何度もプレイできる神ゲーとして全国で大ヒットしていた。
そして、「ノア・フォン・ブラックウッド」。
この人物は、このキャラクターは、「どれだけプレイしても途中で公開処刑されてる何がしたいんかようわからん謎の悪役貴族」という不名誉な地位を確立していた。
この「ノア」以外のキャラは、絶対と言っていいほどキャラクターとしての役割が変わらないことはない。
だからこそ、あまりストーリーに関与してこないのに毎度毎度「どれだけプレイしても途中で公開処刑されてる何がしたいんかようわからん謎の悪役貴族」という地位を維持している「ノア」は、全国のプレイヤーたちの興味をひいていた。
当時、僕もこのゲームをよくプレイしていた。
だからこそ、僕は気になった。
この、「ノア」というキャラクターの異質さを。
だからこそ僕は、何度も何度もこのゲームをプレイして、「ノア」について調べてきた。
これは余談だが、巷では「ノアに人生を賭けてるやばいやつ」って呼ばれたほどだ。
だけど僕は、言葉通り四六時中「ノア」調査に時間をかけても、しばらく何も見つけることができなかった。
だから僕は結局神に祈ろうと神社へ祈りに行った。
祈り祈って、少しくらい「ノア」について知れたら良いなと、そう思いながらノアについて調べていた時の動画を再生したんだ。
そうして僕は見つけた。
「ノア」が処刑される寸前、必ず
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と唱えていると。
だから僕は、そこにノアの秘密が隠されていると踏んだ。
そして、賭けた。
その呪文を唱えることで、僕は処刑から生き残れるのではないかと。
そうして今、僕は賭けに勝った。
何故なら僕の目の前にはまた、処刑される寸前の光景が写っているのだから。
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