第2話
――香織さん、私やっぱり今日行くのやめます
そんなメールがきたもんだから、善さんが取材を受けている横でも構わずメールを打った
歴代の元彼たちに振られ続けた原因である、メールの早打ちが皮肉なことに今の仕事では役立っている
そんなことより、あたしのかわいいかわいいかわいい・・・・(エンドレス)
あきらが、やっと、やっっっとあたしの仕事場にきてくれる約束を取り付けたのは2週間前
ヒト嫌いのあきらがあたしのお願いには弱いことを知っていたあたしは、普通はひっかからない嘘泣きをしてあきらを騙した
純粋なあの子を騙すのは心が痛んだけど、それ以上にきてほしかった
あたしの今いる世界、見ているもの、環境を
あたしの一番大好きなヒトであるあの子とシェアしたかった
その想いをそのままメールにしたためた
わかってくれる、絶対に
「来ないってか」
あたしのスマホを覗くでかい男が興味なさげに聞いてきた
桜井智広(ちひろ)
あたしの先輩アシスタントであり、本人も小説を描いていてコアなファンがいる
この女みたいな名前の男と(って言ったらめちゃめちゃ怒る)まともに会話できるまで1年もかかった
こんなぼさぼさな頭と無精ひげをたくわえているけど、以前昔の写真を善さんがこっそり見せてくれたけど同一人物とは思えないくらい
正直めっちゃくちゃ男前だった
それを本人も自覚しているのか、この身なりはあえてだと言いきっているがただ単に面倒くさがりなのだと今ならわかる
この男を一言で言うならば、女嫌い、ヒト嫌い、無愛想・・・ああもう
一言じゃ言いきれない!
だって失礼だと思わない?
私が働いて2年目に入って、やっと会話してもらえると思ったら開口一番
――お前は女じゃない
さすがのあたしもドロップキックかましたさ
避けられたけどね
あー今思い出しても腹立つな
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