蓮の恋【完】
Rain
蓮の恋
一
第1話
親友の香織さんが働いている大きなマンションの前まで来たはいいけど
急に不安になってきた
彼女の仕事はアシスタント
テレビドラマなどで実写化されている人気小説を描いている人のお手伝いをしている、らしい
今日はドラマの高視聴率にともなって、原作の発行部数が50万部に突破したお祝いを内輪だけで行うようだ
そんなところに部外者の私が来ていいのか、ここまで来てなお迷っていた
三つ年上の彼女は高校を卒業してすぐにその道へ飛び込んでいった
もともと活発で好奇心旺盛な彼女らしいといえばらしい
なぜそんな彼女が今もなお、私のような人間と親しくしていてくれるのかは、出会ってから8年が経つが未だにわからない
そんなことをぼんやりと考えていると、バッグの中にある携帯電話が私を現実へ引き戻した。
バッグから今時の四角い薄いものではないものを取り出すと、携帯電話特有のパカッという音を出して画面を開く
――いまどこらへん?気をつけてきなよ!ていうか迎えに行く?
急いで打ったような彼女のメールは、いつも私の心配ばかり
8年前から変わらないそれに、嬉しいような情けないような、複雑な思いである
さらに複雑なのが、彼女がそれに使命感をもって嬉々としていることだ
『…(よし)』
意を決して、2年間足を踏み入れることのなかった彼女の仕事場への第一関門を押した
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