第25話

"失恋"の二文字に夏南はカクテルを咽せ、バーテンダーを軽く睨みつけた。



けれど、彼はたいして気に留めることなく続ける。



「結構、本気で好きだったんですよね?その人のこと」



「.....違うわよ、仄かに好きだっただけよ」



エスパーか?読心術でも持っているのか?目を剥いてバーテンダーを見つめる夏南に、彼はクスリと笑った。



「頑なだなぁ?まぁ、そこが可愛いところでもあるけど」



「ちょっと、わたしはねぇ、別にあの人のことなんか...」



目に涙を溜めて言い返す夏南の唇に人さし指を当てた彼は、カウンターから外へ出て看板の電気を消した。



そして、スツールに腰掛ける夏南の背後から近寄り、彼女の耳元で囁いた。



「失恋に効く薬は新しい恋だ」



その彼の首にはチェーンに掛かったシルバーのリングが怪しく光っていた――。







natural note 

ほろ苦ラブストーリー


「仄かに恋している」


FIN

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