第24話

6、仄かに恋をしている


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閉店時間10分前、ダークブラウンの分厚いドアが鈍い音を立ててゆっくりと開いた。



「いらっしゃいませ」



「.....ごめんなさい、もう遅いかな?」



「いいえ、大丈夫ですよ。

夏南さんならいつでも大歓迎です」



遠慮がちに顔を覗かせた夏南に、バーテンダーは人懐っこい笑みで彼女を迎え入れた。



彼女がこんな時間に来るのは珍しい、いつもは艶やかな髪を真っ直ぐに下ろしているのに、今日は無造作に束ねただけ、それも彼女らしくない。



何かあったな?と察したバーテンダーは、夏南のオーダーを聞かずに頭の中で浮かんだカクテルを無言で創り始めた。



「ネバダです、どうぞ」



夏南の前に差し出されたカクテルグラスには、黄金色の美しい液体が入っている。



引き寄せられるように口を付けると爽やかな酸味の後に、ほろ苦さが広がった。



「....美味しい」



「ラムベースにグレープフルーツジュース、アンゴスチュラ・ビター。失恋の苦さにぴったりだと思います」

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