第16話
でも、まぁそれは2人の間のことであって、わたしには関係の無いことだし。
それよりわたしは、仄かに恋心を抱いていた蒼井さんが紗由理の彼だったことに、少なからずショックを受けていた。
紗由理が相手なら勝ち目無い。
お嬢様育ちながら甘えた考えはなく、自分の足でしっかりと歩いてきた人間だ。
それでいて性格は可愛らしくて、見た目は美人。同性から見ても完璧で文句の付け所がない。
.....ヤケ酒かな?
うん、今夜は淡い失恋にヤケ酒だ、ちょっと奮発して高いお酒を買って帰ろう。
そんなことを考えながら駅の階段を登っていると、後ろから声を掛けられた。
「麻生さん!」
「.....蒼井さん?」
「あぁ、良かった。追い着いた。
ねぇ、せっかくだから飲みに行かない?あの時のお礼もしたいし」
あの時のお礼....?
「酷いな、忘れたの?ハンコ!課長の代理でハンコを押してくれたでしょ?」
蒼井さんは手の平に、ポンっとハンコを押すジェスチャーをして笑った。
.....覚えてたんだ。
覚えていて、彼は「はじめまして」と言ったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます