第14話

「はじめまして、蒼井拓海です」



ペコッと頭を下げて人懐っこい笑みを向けてくれた蒼井さんは、紗由理の隣に腰を下ろした。



「....はじめまして、麻生夏南です」



初対面では無いんだけどな、っと、メニューを見るふりをしながら彼の顔を伺っていると、バチッと視線が合ってしまった。



......!?今の....気のせい?



意味ありげな瞳で見つめ返されたような気がしたけど....?

いや、気のせいだよね??



「ちょっと、夏南?メニューを拓海さんに渡してあげてよ」



「あ、あぁ、ごめんなさいっ」



どうぞ、と渡すわたしに、どうも、と微笑む彼は至って普通の顔。

....うーん、気のせいか。



「ホント、夏南ってちょっとボーッとしてるところがあって心配になっちゃう」



「あはは、ごめん。

ね、わたしお邪魔だからそろそろ帰ろうかな?」



夜も遅いし終電逃すと面倒だし、明日行きたいところがあるし、なんて言い訳を並べて席を立つわたしに、蒼井さんも腰を浮かせた。



「それなら僕たちも出よう?こんな時間に独りで帰るのは危ないから駅まで送るよ」



いや....結構です!!

むしろ、独りにしてください!!

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