第9話

わたしの心の中に魔女が住み着いたのは、いつ頃だろう?もれなくセットとして天使も付いてきた。



....なんて、話は横に置いておいて。




「じゃぁ頼んだからね」そう言い残し更衣室から風と共に去って行く紗由理を唖然と見つめている。その後ろから怨念のこもった声が聞こえた。



「行くの?その店」



のわっ!.....びっくりした。

この声、この話し方、そしてこの登場の仕方......もうひとりの同期、景子だ。



「行きたくないけど.....」



「いいじゃん行けば?本家が頼んでるんだから」



「そうだけど」



景子まで魔女と同じことを言ってんじゃないよ!っと恨ましげな視線を送ったけど、



「くそ羨ましいね、蒼井さんとデートだなんて」



人の気持ちなんか、ましてや空気でさえ読もうとしない景子は、声をワントーン落としてわたしの耳元に口を寄せた。



「ここだけの話し、最近上手くいってないらしいよ、紗由理と蒼井さん」



「....誰が言ってたの?」



「社内でもっぱらの噂、なぁーんか紗由理の方が蒼井さんを避けてるって!贅沢ものだよね?あいつ」



上手くいっていない、か。

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