第8話
「駅前に新しく出来たフレンチのお店、知ってるよね?19時に予約取ってあるんだけど、急用で行けなくなっちゃったの。代わりに行ってくれないかな?」
.......はい?
突然のことで声が出せないでいると、それを肯定だと受け取られたようで紗由理はニッコリと微笑んだ。
「なかなか予約の取れない店でね、せっかく取れたのに勿体無いでしょ?彼も行きたがっていたし....あ、そうだ」
紗由理はわたしの耳元に唇を寄せた。
正直、断りたい。
けれど、わたしの心の中に棲んでいる魔女がそれにストップを掛けた。
「そのワンピースでも充分良いけど、一応ドレスコードがあるから、ネックレスを貸してあげる」
うん、これで華やかになった って、紗由理は手を叩いて笑うけど、わたしの心では魔女と天使とのバトル中だ。
魔) いいじゃん、あっちから頼んできたわけだし!
天) 駄目だよ、傷つくのは結局、夏南なんだよ!
魔) 何言ってんのさ、油断する方が悪いだろ?
天) そういう問題じゃないよ?
魔) へっ!そういう問題だろ?堂々としてりゃいいんだ。
天) 夏南!自分から傷つきに行く必要はないでしょ!?
ええええーい、五月蝿い。
ごちゃごちゃごちゃごちゃと、ジャッジを下すのはわたしだ。
だが、結局、いつも魔女がわたしを誘惑する。
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