第7話

煩わしい、面倒くさい。

同僚たちとお喋りするくらいなら、最近お気に入りのBARに独りで行きたい。



そういうわたしもやっぱり少し浮ついているらしい。否、自棄を起こしている。

頭の中ではそのBARに居るバーテンダーのことで満たされつつあり、軽い歩調で更衣室から出ようとした時、



「あっ!夏南、待って!!」



後ろからガシっと腕を掴まれた。



ん?誰?



振り向いたそこに居たのは、同期入社の紗由理(さゆり)。

彼女は焦ったような表情をしていた。



「どうしたの....?」



何かあった?首を傾げ尋ねたけど、紗由理はじっと黙ったまま何も言わない。


.....??



紗由理とは入社当時から仲良くしていて、今は別の部に居るからなかなか時間が合わないけど、前は毎週末2人で飲みに行っていた。



今日は珍しくあがりの時間が一緒だったから、食事の誘いかな?って思ったけど...、



しばらく無言でわたしを見つめていた紗由理は、徐に口を開いた。



「夏南さ、今夜空いてる?」



「うん、空いてるよ」



「そっか......あのさ、急で悪いんだけど、ちょっと頼みたいことがあるんだ」



え?何?....、

首を傾げて話の続きを促すと、彼女はとんでもない事を言い出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る