第44話

* * *




「――え?すみません、もう1回言ってください」




会社に戻ってすぐ伝えられていた会議室に入ると、日野さんと時枝ディレクターが、何やら渋い顔をしながら私を待っていた。


その瞬間、やばい、何かやらかしたんだ!


そう萎縮したのだけど、彼らの話とは私の予想をはるかに超えたものだった。




「日曜日の朝7時からの番組を担当して貰うって言ったんだ」




何度も同じことを言わせるなよ、と。


相変わらずニコリともせず、時枝ディレクター腕時計に視線を落とす。それからポンっと私の頭に手を乗せて、そのまま部屋を出て行った。


もうちょっと、褒めるとかしてよ。


そう抗議したいところだけど、自然と湧き上がる笑みを堪えることができない。




「やったじゃん、あいちゃん!大出世!」




まだ会議室の中に残っていた日野さんが、私の肩を軽く叩いた。


その顔は私と同じく破顔していて、さてはさっきわざと渋い顔を作っていたんだな?という考えに辿り着く。




「酷いですよ、日野さん。私、てっきり何かやらかしたのかと!」


「あはは、真っ青だったもんね」


「もうー、それならそうと早く言ってくれたらいいのに!」

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