第45話

信じられない、信じられない。


朝の7時の番組といえば、当局では花形の時間枠の1つ。


普通なら中堅~ベテランのパーソナリティーが担当するところなのに、まさか2年目の自分にこんなチャンスが舞い降りてくるとは!




「時枝ディレクターが、あいちゃんを推したんだって」


「え?」


「今担当してる雅哉さんが、生放送がキツイって言うようになって。上層部は何とか説得していたみたいなんだけどね」


「雅哉さん、具合悪いんですか?」




雅哉さんというのは、この道25年の大ベテランで、私も中高生の頃によく番組を聴いていた人気のパーソナリティーだ。


確か、この春から体調を崩しているというのを聞いていたけれど。




「うん、あんまりよくないみたい。収録放送なら体調をみながらやれるけど、生放送は何があるか分からないしね」


「ですね……」


「でね、時枝ディレクターが、代わりのパーソナリティーにあいちゃんを推薦したんだって。あの人、本当にあいちゃんのことをよく見てるよね。雅哉さんもあいちゃんなら任せられるって言ってたらしいよ」




そう、だったんだ。


何かこんな時にチャンスが回ってきたなんて喜ぶのは、不謹慎なような気もするけど。だけど。




「ちょっとー、何暗い顔してんのー?ここは喜ぶところだからね?"私に任せてください"って胸張って言うところじゃん!」




日野さんが、私の背中をバシっと叩く。


今度は手加減なしの思いっきり痛いやつだったけど、そのお陰で気合が入った。


うん、チャンスはチャンスだ。

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