第43話

そりゃ大学時代の友達とかいるかもしれないけど、社内で人とつるんだりしている姿を見たことがないから、あまりピンとこない。


というより、私とりゅうじさんの関係は、杏子にしか話しておらず、社内ではあくまで上司と部下。


だから、そういう彼氏の友達を紹介してとか、後々面倒になりそうなこと、頼まれても困るんだけどな……。


と、その時だった。




「うわ、な、何?電話?」




ガラステーブルの上に置いてあったスマホが大音量を鳴らしながら、振動して、それにびっくりした杏子が鞄を床に落とした。




「杏子、大丈夫?」


「あー、やっちゃった。大丈夫大丈夫。あいは電話に出て」


「うん」




いつもは大きな音が鳴らないようにしてるのに、どうして今日に限ってこんな大きな音が?


……あ、もしかしたらほまれかも。昨日、私のスマホで何かしてたし。帰ったら絶対文句言ってやる。


そんなことを考えながらスマホを耳にあて、床に散らばっている杏子の持ち物を拾ってはテーブルの上に乗せていく。


電話は日野さんからで、すぐに社に戻ってくるように、というものだった。




「会社に戻れって?」


「うん、話があるって」


「何かしたの?あい」


「やめてよー」




不吉なことを言わないで。


そんな冗談を交わしながら、最後の落とし物を杏子に手渡して、あれ?と思った。


この赤い色のマジックペンって……。

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