第42話

「ごめんね」


「いいよ、ホテルにでも泊まるから」




杏子の良いところは、サバサバしているところと、切り替えの早いところ。


友達より彼氏を優先した(という体)私を責めることもないし、見限った男のことをグチグチいうこともない。意識は常に、次、だ。




「あーぁ、やっぱり次は年上かなぁ?時枝さんっていくつだっけ?」


「今年32歳」


「ということは、8歳上か!それくらいだと人生経験も豊富だよね」


「まぁ、そうかな」


「私、思ったんだけど、男は余裕があるくらいの方が良いと思うんだよね。ガツガツしてないというか、ヤキモチ妬いたり束縛したり、そういうのが嬉しいのは初めだけでしょ?」




そうかなぁ?そういうものかなぁ。


でも、全くヤキモチ妬かれないのも、放置されまくるのも、寂しいもんだよ……と、この間のりゅうじさんを思い出して、心が重くなる。


すっかり冷えたコーヒーが、やけに苦く感じた。




「うん、決めた!次はうんと年上の人にする。というわけで、誰か紹介して」


「は?私が?」


「誰かいるでしょ?時枝さんの友達とか」


「知らないよ」




りゅうじさんの友達なんて紹介されたことなんかないし、そもそもあの人に友達なんかいるの?

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