第41話

はぁ……と、深い溜息を落とした杏子は、物憂げな表情を浮かべてティーカップに口を付ける。


純和風の美人で社交的な彼女は、次から次へと彼氏を作るが、如何せん見る目がないため長続きしない。


というより、母性本能が強く世話焼きな彼女と付き合うと、大抵の男が赤ちゃん返りをしてしまうのだと思う。


ダメンズウォーカーならぬ、ダメンズメーカー。


こんなこと、口が裂けても言えないけど。




「悪いんだけど、あいの家にしばらく泊めてくれない?」


「え?」


「ほら、私、同棲してたじゃない?多分、まだ家に居ると思うんだよね。あいつが出て行くまでで良いから」


「あー……」




泊めてあげたいのは、やまやまだけど。


どうしよう?私の家には今、ほまれが居ること、杏子には言ってないんだよね。


別に隠すことじゃないけど、報告するほどのことでもないし、と思ってそのままだったのを、このタイミングで言う?


しばし、考えあぐねていると、杏子がニヤっと笑った。




「何よ、私が居たら邪魔ってこと?もしかして、」


「え、いや、」


「ふふふ、そうよね、あいの家には時枝さんが来るもんね」




あ、そっち?


りゅうじさんが家に来ることなんてまず無いのだけど、杏子がそう解釈してくれているなら、わざわざ訂正する必要もない、か。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る