第35話

迷子?……と。


その言葉は使わなかった方が良かったのかもしれない。女の子は改めて自分が置かれてる状況と、私たちの少し慌てた様子に、オロオロとし始め、やがて大粒の涙を落とした。


じっと我慢していたものが、切れてしまったのだろう。


ハンカチ、ハンカチ、と、ジーンズのポケットを漁ったけど、急に家を出て来たものだから、あいにく持ち合わせてなく。


さっきのお店でおしぼりを貰いに行こうかと思案するよりも早く、ほまれが動いた。




「泣かないで」




女の子と視線を合わせ、親指で彼女の涙を拭く。


それからニコッと笑って、大丈夫!お兄ちゃんが傍に居てあげるから!と力強く頷いて見せた。


ほまれは、とても優しい子だ。


困っている人がいると、真っ先に助けようとする。当たり前であって当たり前に出来ないそのことを、率先してやろうとする。


きっと、私がさっき、嫌がらせで困ってると弱音を吐いていたら、自分に出来ることをしようとしてくれただろう。


誰にでも優しい、誰にでも心配そうな顔をする。


……変なの、私、ちょっと面白くないって思ってる。変なの。




「秘密戦士ルルーちゃん?」


「うん!そう!」


「可愛いね、この子、好きなんだ」


「うん、パパがね、かってくれたの!」

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