第33話

あいは、強いね。


手を繋いで歩き出したほまれは、ポツリとそんなことを言う。


ひんやり冷たい秋風に少し背中を丸くしながら、赤や黄色に染まった木々をゆっくり眺める。


こんな風に視線を上にあげてのんびり歩くのも久しぶりだなぁーと、小さく伸びをする。


目的が無いままダラダラと歩いて、何となく公園に足を踏み入れた。




「ねぇ、デートの定番と言えば?」


「定番?……うーん、とね」




ほまれは小さく唸りながら、公園の中にぐるりと見渡した。


それからすぐに、あっ!と、声をあげる。私の意図していることが分かったらしい彼は、顔を綻ばせた。




「ボートがある!」


「まさに、定番でしょ?」


「うん!あい、乗ろうよ」


「いいよ、漕いでくれるならね」


「えー、一緒に漕ごうよ」




ほまれは、”一緒"という言葉をよく使う。


何かをしようとすると、すぐに自分も一緒にしたいと言うし、逆に、先に済ませてしまったら、一緒にしたかったのに、と拗ねる。


単に甘えたなのか、それとも、共有意識が強いのか。


そんな風に思っていたけど、そこにはちゃんとした意味があったんだよね。


ボートのオールを漕ぐのは、見ているよりもずっと難しくて。


同じようなところをクルクル回ってしまい、ふたりでお腹がよじれるほど笑った。

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