第31話

ほまれは、意外とせっかちだなぁ。


散歩の準備が整ってリードを付けて貰ったら、もう興奮が収まらなくて、その場で飛び回るワンコみたい。


そんなことを思い笑いながら郵便ボックスの蓋を開けて――――、息を飲んだ。




「どうしたの?」


「……うん」


「何それ、ちょっと見せて」


「あ、ほまれ!」




郵便ボックスに入ってあったのは、くしゃくしゃに丸められた紙で、そこには赤いペンでデカデカと"消えろ!"の文字が。


他にも同じような紙があり、それらは同様に、"ウザい!""調子乗るな""死ね"と書かれてあった。




「何だよ、これ……誰がこんなこと」


「ただの悪戯だよ」


「それにしちゃ酷過ぎるよ!」




ほまれは、紙を手に持ったままワナワナと震えている。


純粋かつ真っ直ぐな性格の彼は、こんなにも悪意を剥き出しにした行為を受け止めきれないだろう。


……失敗した。何だろうね?って、適当に誤魔化してさっさと捨てれば良かった。




「気にしないでいいよ、あのね……よくあることだから」


「どういうこと?」


「うーん、職業柄というべきか、妬まれたりするんだよね。それでたまに嫌がらせさせる。でも、こういうのは気にした方が負けだから」




さすがに家の郵便ボックスってのは、びっくりしたけどね。


でも、まぁ、会社まで徒歩5分のところに住んで居るわけだから、調べようと思えば誰だって出来ることだ。

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