第22話

とはいえ。


自分で考えた企画が1つ成功したというだけで、番組の進行にしても、話しをする内容にしても、先輩パーソナリティーたちに比べたら、足りないことだらけ。


現状に満足するなんて、まだまだ先だ。



「日野さん、反省会しましょう!何か悪かったところ言ってください!」


「出たよ、このド根性娘」


「あたりまえじゃないですか、浮かれてる場合じゃないです」


「あいちゃん、本当に仕事が好きだよねぇ」




だらーんとした顔で、バナナを頬張る日野さんに、今の言葉をそっくりそのまま返してあげたい。


あなた一体、いつ家に帰ってるの?




* * *




「こんばんはー」


「いらっしゃいませ!」


「今日、来てます?」


「来てる来てる。さっきからずっーと難しい顔をしてタブレットを叩いてますよ」


「わー、やっぱり帰ろうかな」




明け方の4時。


こんな時間からでも来店OKのこのお店は、会社から少し離れた場所ある、知る人ぞ知る隠れた名店だ。


マスターが1人と、バイトの男の子が1人と、マスターの奥さんがたまに顔を見せる程度のこじんまりしたところだけど、お酒と小料理が美味しくて、お気に入りなんだって。


私じゃなくて、時枝ディレクターが、だ。

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