第21話
「泣けるね!幼馴染との純愛」
「ですね、運命とか感じちゃいますもんね」
「あいちゃんにも、そんなピュアな心があったの」
「あ、酷っ!日野さんだって」
生放送が終わった後は、その日の感想や反省を番組スタッフと話し合うのが通例。
けれど、日野さんがいるとどうしてもこうやって恋バナになることが多くて、その話題となるのが、『想い人へのラブレター』というコーナーに寄せられた手紙の内容だ。
「それにしても!初めに会議で聞かされた時は、こんなに人気が出るコーナーになるとは思わなかったよ」
「日野さん、速攻で却下しましたもんね」
「あはは、したした」
「今時、誰がラジオにラブレターを送るんだって」
「そりゃそうだよ、このデジタルな時代だよ?わざわざラジオに投稿しなくても、自分でメール送ればいいじゃんって思うよ」
――――でも。
『いいじゃないか、こういう時代だからこそ、そういった古典的なやり方が面白いと思う人もいるだろ』
時枝ディレクターがそう言ってくれて、日野さんを含め番組スタッフたちを渋々ではあるけれど、頷かせてくれた。
会いたいけど、もう会えない。
今更だけど、伝えたい。
返事はいらないから、ただ受け取って欲しい。
もし、ラジオで聴いてくれていたら、私を思い出してくれるだけでいい。
独りよがりだけれど、愛のこもったメッセージを。
そんな気持ちを込めて始めたこの『想い人へのラブレター』は、地方紙で紹介して貰ったこともあって、今では当局の名物コーナーになりつつあるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます