第25話

「あー!ちょっと勝手にわたしのジュース飲まないでよ」


「いいだろ、少しくらい。ケチだな」


「そういう問題じゃなくて……!」




あぁ、しかし本当に煩い。

美和と高橋くんは家が近所の幼馴染らしく、毎日毎日毎日……飽きないのかな?



ジュースを美和の手に届かない位置まで持ち上げる高橋くんに、それを奪い返そうと飛び跳ねる美和。



そんなふたりを見て、思わず溜息が零れた。




「くだらない、って感じ?」




ふいに耳元で低い声を注ぎ込まれ、背中がピクリと反応する。ずばり的を得た言葉だっただけに、余計に。




「一条くん、」


「何がそんなに面白いのか、って思うだろ?」


「……」


「たかだかジュースくらいで、面倒くさ。とか」


「……」


「どうでもいいけど、さっさと外行って、サッカーしてくればいいのにって」


「そこまでは思ってない」


「嘘付け。顔にそう書いてある」




わたしの顔を覗き込もうとする一条くんの髪が揺れる。



アーモンド形の瞳は透明で、わたしの心を全部そっくり映し出そうとしているのでは?と、不安になりそっと目を反らす。



そんなわたしに、彼はくつくつと笑い声を漏らして、「冗談」と、リストバンドを付けた腕を上げて自分の黒髪を掻き上げた。




彼は、わたしの同類なのだと思う。

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