キャラメルコーンと、フルーツジュース
第23話
「あ……」
そんな声が聞こえ視線をそちらへ向けると、声を上げた女の子の手から花瓶が落ちる瞬間だった。
底の丸く綺麗な絵が描かれたそれは、まるでスローモーションのように床へと落下する。派手な音を立て四方に飛び散る破片は、小さな放物線を描いた。 (そう、この瞬間) 飛び出す破片は、まるで自由を得たかのように、新しく姿を変えたことに喜んでいるかのように宙を舞う。
わたしはこの"モノが壊れる瞬間"が大好きだ。
「れーいー」
ぼんやりしていたわたしの耳に、美和の間延びした声が届く。「ん?」と視線をあげると、彼女は唇を尖らせて上目遣いにわたしを睨んだ。
「また、ぼーっとしている。ご飯が冷めちゃうよ」
「あぁ……うん、ごめん」
「どうかしたの?また悩み事?」
「違うよ、えっと……どれから食べようか悩んでいただけ」
宙に浮いていたお箸で、目の前にあるお皿の中身を順番にツンツンと突く。 決して行儀のいい行為ではないけれど、それを見た美和はニコニコと目じりを下げて笑った。
「確かに迷うよねぇ?どれも美味しいもん」
学生食堂の日替わりランチは、生徒の間でも人気が高くすぐに売り切れになってしまう。 運よく食べれた日は、その豊富なメニューの中から、どれを先に食べようか迷ってしまうのだ。
……と、これはあくまで咄嗟に出た言い訳なのだけど。
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