第20話

別に凌に彼女が出来たことが気に入らないんじゃなくて、彼女持ちになったなら馴れ馴れしく接して欲しくないだけ。



心配そうで泣きそうな顔を見るのは、家の中でだけで十分だよ。




「てめぇ、このやろう」


―――ガッシャーン




凌が大きな声を出したのと、ガラスが割れるような音がしたのは同時で、そのあとすぐに女の子たちの「きゃー」と叫ぶ声が聞こえた。




「ちょっと、澪やばいよ。挑発し過ぎ」




なっちが耳元で囁く。

だけどもう、わたしの頭の中は"嫌悪感"に支配されていた。




「とにかく、もう馴れ馴れしくわたしに声を掛けないで」


「お前な、誰のお陰でここに出入り出来ていると思ってるんだ!」


「凌のお陰。それは分かってる。でもさ、あんた一回酔いを冷まして由香里ちゃんの顔を見てみなよ?最低だよ」


「うるせぇ、俺は由香里と付き合ってやってんだ!有難く俺に従えば良いんだよ」




―――パチ、ン




乾いた音が静まり返ったフロアに響く。いつの間にか周りの注目を浴びており、激しく流れていた音楽も中断されていた。




「痛ってえ!てめぇ!ふざけんな、お前なんか出禁にしてやるよ!舐めんじゃねぇーぞ、このクソ女」


「あっそ、出禁で結構。あんたみたいに酒飲んだ時しか大きくなれない男、2度と会いたくないわ」

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