第19話

「澪ー!おっそいよ、トイレに何分掛けるつもり?」




結局色付きリップを何度も重ね付けをし、試供品で貰ったチークで顔色の悪さを隠して席に戻った。




「うるさいなぁ、トイレくらい自由にさせてよ」




なっちはもうとっくにさっきの男の子と一緒にどこかへ行っていると思っていたけど、男の子だけ居なくなっていて、代わりに凌がその場所に座っていた。




「澪」


「何?」


「そんな冷たい目をするなよ、俺に彼女が出来たのがそんなに気に入らないか?」


「冗談言わないで。でも、彼女持ちになったなら今まで通りに接しないから」


「はぁ?何だそれ?」




凌は大げさなくらいに顔をしかめ、緑色の瓶の中身を煽るように喉へ流し込んだ。



(相当、酔っている)



口調が普段より荒れているし、目も座っている。顔が赤くて息が酒臭い。



ちょっとまずいな……と、視線を外した先に、心配そうな面持ちでこちらを見つめる女の子が目に入った。



きっと、あの子が由香里ちゃんなんだろう。




「彼女が出来たんなら、彼女を大事にしなよ。そういうの嫌いなんだよね」


「お前、誰に向かって……」


「アンタよ、凌。何が嬉しくてこんなに酔っぱらって絡んで来るのか知らないけど、自分の女にあんな顏をさせんな」

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