第15話

さらりと揺れる金髪が、頭の中にふと浮かぶ。


男のくせに甘ったるく掠れた声と中世的な顔が綺麗だと、常連客の間で密かに人気なのを知っている。



しょっちゅう女の子に呼び出されて告白されていたのも知っている。



それでも凌は彼女を作ろうとしなかったから、"女"に興味ないのかと思っていた。




「そっか、彼女作ったんだ」


「何~?密かにショック?澪と凌って仲良かったもんね」


「別に~、"どの"凌だったか忘れてたくらいだし、どうでもいい」


「はぁ……本当に冷めてるんだから」




なっちが苦笑しながら言う。

けど、それは一瞬で彼女は口を「あ」の形にさせ、わたしに目配せした。




「久しぶり、澪」


「凌……」


「また、いつものノンアル?相変わらずビビりだな」


「うっさいなぁー、何か用?」




心の中がざらっと苛つく。



彼女が居るくせに、馴れ馴れしく隣に腰かけて肩に腕を乗せるなよ、とか。


最近ろくに話してなかったのに、"相変わらずノンアルでビビり"とか馬鹿にすんな、とか。



心がざらつく理由はそれで、決して凌に彼女が出来たからではない。そう顔を背けたわたしに、凌は耳元で囁いた。




「本当は由香里より、澪の方が好きだよ」

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