第14話
なっちはテーブルをバンバン叩き、上半身を上下に揺らす。店内に流れる音楽が丁度鳴りやんだタイミングだった為、周りから注目を受けてしまい耳が熱くなった。
「ちょっと、そこまで笑わなくていいでしょ?」
必然的に小声になる。
「だって、可笑しいもん!澪ってさ、冷めているくせにちょっと天然入ってるよね?」
「は?天然って、」
「澪にあんなに良くしてたのに、"その凌"とか言われる凌が不憫ー!」
「うっさいなぁ、もう」
思い出したよ、思い出したとも、"その凌"ね。
放課後に繁華街をうろつくようになってしばらくした頃、密かに気になっていた、ここ"CLUB BUTTERFLY"の前で、声を掛けてくれたのが凌。
彼はこの店の黒服(スタッフ)で、店の外でチケット売りをしていたんだ。
『中入る?招待状あげるけど』
『入っていいの?わたし、まだ……』
『大丈夫、ぱっと見た感じじゃ高校生に見えないから』
冬服の制服の上からぶかぶかのセーターを羽織っただけ。今思えば危険極まりないその恰好で、よくクラブに入れたな、と。
あれから半年、凌は黒服の中でどんどん偉くなって今は責任者のような仕事をしている(らしい)
前は頻繁に顔を合わせてお喋りしたりしていたけど、滅多に顔を見なくなったんだもん、"その凌"になってしまっても、仕方ないでしょ?
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