第13話

「ねぇねぇ、りょうと由香里が付き合いだしたの知ってた?」


「へぇ、知らない」


「ちょっと意外な組み合わせだよね?りょうってあんなケバイのが好きだとは思わなかった」




りょうっていうのがどんな男で、由香里って子が誰かも知らないけど、なっちに「ケバイ」と言われるのは少し可哀想だな、と思う。



必要以上に盛ったまつげに、塗りたくったアイシャドウ、テカテカのグロス。素材はそんなに悪くないのに、下手なメイクのせいで損している。



……が、そんなことを忠告して気まずくなったりするのが面倒だから言わない。




「由香里なんかより澪の方がずっと可愛いのにさ。知ってた?りょうって澪のことが好きだったんだよ」


「そう……なの?」


「そうだよー!めちゃめちゃ贔屓してたじゃん!このクラブに入るのだって紹介じゃないと無理なのに、りょうが上の人に言ってくれたんでしょ?」


「あ……」


「ん?」


「りょうって、その凌のことか」




テーブルの上にあるトールグラスを持ち上げる。長くそこに置いてあったせいで表面の水滴が底にたまり、コースターまで一緒に連れてきたことに、小さく舌打ちをした。




と、そのタイミングでなっちが吹き出した。




「あはははっは!澪ってば、ウける!その凌って、どの凌だと思ってたのぉ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る