第12話

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薄暗い部屋の中で、派手な音楽が流れる。


日本語なのか英語なのか、もしかしたらポルトガル語かもしれないけど聞き取れない歌詞に合わせ、体で軽くリズムを取る。



ケラケラと馬鹿騒ぎする男と、女。

氷が溶けて薄くなったお酒、転がっているハイヒール。




繁華街の地下にあるそこに集まる連中は、どいつもこいつもイカれた顔をしている。




「澪、また新しい服買ったの?これ、超可愛い」


「ありがとうー」


「いつもお洒落だよね?同じ服を着てるのを見たことないんだけど!」


「安物ばっかりだよ」


「とか何とか言って!どうせパパに貢がせてるんでしょ?」




ソファーの隣に腰かけるケバイ化粧の女が、わたしの服を摘まみながら言う。


剥げかけたネイルが女の評価を下げていても気にしない。100sの煙草に火を付けて紫煙を吐き出した女の顔には「知ってるんだぞ」と書いてある。




「ふふふ、そうかもね」




いちいち否定するのも面倒だし、適当に話を合わせる。すると女は満足そうに頷いた。



彼女の呼び名は「なっち」

人のことを詮索をする癖があるところはウザいけど、サバサバしているところは割と好き。



本名は何ていうのか知らないけど、このクラブで知り合ってからずっと顔を合わせば必ずといっていいほど、こうやって話しかけてくる子だ。

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