第9話
「夏休みに入ったらもう遊んでいられないよね」
ふと、そんなことを美和が零す。
学校の門をくぐり駅まで徒歩10分程度の道なりは穏やかな上り坂が続く。その沿道にはつつじの花が綺麗に咲いている。
"たった10分"の道を一緒に歩くだけのことを、彼女と何回繰り返しただろう?と、ぼんやり考えた。
「澪、聞いてる?」
「うん、聞いているよ」
「夏休みに入ったら遊べなくなるから、その前にどこか行かない?」
「そうだね、どこ行く?」
「買い物行こうよ、プリクラ撮りたいしカラオケも行きたい」
目をキラキラとさせながら、くるりとその場で体を回転させた美和に、目を細める。
小動物のような動きが可愛くて、気が付けばクスクスと笑っている自分がいた。
「いいよ、行こう」
「お!じゃぁ約束ね!」
ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます
そんな生温いことを言い出したのは、誰だろう?
嘘を付いたなら、もっともっと苦しめてあげればいいのに。
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