序B:飛び火
同時刻。安ホテルの一室で人影が動いた。
「当たりのようですね。辺境の島まで来た甲斐がありました」
暗闇に少女の声は溶けていく。窓へ歩み寄った。街灯の光の端がその頬を照らす。耳にかかった金色の明るい髪がかすかに輝いた。
「今度はどんな方でしょう。この前のお転婆よりはましでしょうが」
ゆったりとした眠気を誘う口調だった。半分ほどしかまぶたが開いておらず、表情にも眠たげな雰囲気が漂う。
「……夜は暗いですから、眠くなりますね」
つぶやくと、大きなあくびをした。
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