第7話 寄り添い
お姉ちゃんとの電話が終わり、言われた通りにキッチンの棚を探すと本当にカップラーメンがあった。同じのが何個も。
久々のカップラーメンは胃が温かくなってなんだか安心した。
さっき棚を開けたとき醤油味のカップラーメンしかなくて少し笑ってしまった。
昔から『元祖が一番!』とお兄ちゃんは笑っていた。
カップラーメンを食べ切ってからは何もすることなく、スマホをぼーっと眺めて1時30分を少し過ぎた頃にお姉ちゃんから着信が入った。
「もしもし?今近くのコインパに止めたからお部屋行くね。202だっけ?」
少し待つと、真っ赤なジャージを着た姉が部屋に「おっとっと、痛っ!?なんか踏んだ!?」なんて言いながら入ってきた。
「ねえ、もうちょっとマシな服装なかったの?」
「???」
昼間は温かいけど、夜はまだ冷える。なのにジャージだけって……あと、ダサい。
いや、髪も若干ぼさって前髪はちょんまげだし、メイクもしていない。きっとわたしが電話をして本当にすぐ車を走らせてくれたんだ。
それなら、私がすることは服装を指摘することじゃなかったと反省する。
「お姉ちゃん、ありがと……っ」
「おっふ……お気にせずっ」
電話のときは凄い頼りになったのに、今はニヤけた顔を抑えようとして更に変なニヤケ顔になっている姉に本当に同一人物か疑いたくなる。
「ふぅ……妹は
変な前置きの後、お姉ちゃんはわたしと同じようにベッドを背にして座って話し合う。
きっと一人だったら、これからどうするか決めることなんてできなかった。
側に誰かいることの安心感を知った。
「
①会社には行かせない。
会社に電話をいれて休みにしてもらう。
②部屋の掃除をしてちゃんとご飯を食べてもらう
③病院に行く
④今後の相談
」
大まかな方針だけ決まった。
一先ずは、お兄ちゃんを守る方向に動く。話しを聞くのはその後だ。
だけど……
「お兄ちゃん、病院行ってくれるかな……?」
「これは難しいかもね。千歳のトラウマもあるし。病院は後回しでもいいと思う。……だって美優もう会社に行かせる気ないでしょ?」
「あ、うん。そりゃあね」
家に帰ってきてまた会社に行こうとするとか、清潔感のあったお兄ちゃんがあんな状態で職場に向かうこと自体、原因は職場にあると確信できる。
そんなの今後とも行かせるわけがない。
「美優、少し寝た方が良いよ。私が起きとくから。今日起きたの16時だし」
「不健康すぎでしょ……」
そんな軽口を交わして横に座っている姉の方に頭を預ける。
「フヒッ」とか聞こえたけど聞こえなかったことにする。気にしたら負けだ。
「花?お花なの?私の妹はお花の妖精?妹のキューティクルが私の乙女細胞を浄化させてくりゅ……っ!」
「……なんかしたら折るからね」
「うぃっす」
まったくもう。
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