黒猫の名前は?
唐突にやり直さないか聞かれたわたしは戸惑った。
どうやってやり直すのか。
黒猫の名前は『テラ』と言う。
齢1000歳を越えているらしいので、『テラさん』と呼ぶことにした。
テラさんはあの世とこの世を行き来しているようで、こうやってこの世に未練があったりする人の手助けをしているようであった。
彼は『転生』する気はなく、わたしがこの世からあの世へ来るまで今の年齢を維持するらしい。
「急に転生して、赤ちゃん育てますとかじゃ困るでしょ?」
と笑う彼は彼らしいと言ったら彼らしい。
あの世の転生とやらは0歳かららしい。
そう考えると誠に彼らしいなと思う
連絡手段としてはテラさんが手紙を届けてくれるそうだ。
言わば『文通』である。
テラさんと会った場所に行けば大体いるそうなので、好きな時に好きなだけ文を書いてくれとのことである。
そして、わたしたちがこれからどう逢うのか。
それは、わたしが現世を全うしてこの世界に逝くまでもう一生逢えないのである。
たった一度きりとはそう言う意味であった。
全然連絡も取れなかった時よりもマシと思うのがいいのか…
これから悩み事があった時など相談できる相手ができたことを良かったと思うのか。
「とりあえず、俺は人の世のことは見えてるからさ!悩みがあったりしたら相談してよ」
『わたしのことを心配してくれて見守っていてくれたんだ』
心が暖かくなった。
かく言うあの世とこの世での恋愛は始まろうとしていた。
「ちなみに、もう別れって来ないらしいよ」
と彼は笑う
懐かしい笑顔である。
わたしはこの笑顔が好きだった
いや、今も好きである。
「別れが来ないってどう言うこと?」
とわたしが聞く。
「いやさ、もう一回別れてあの世とこの世で離れたカップルってもう別れないんだってよ?真偽は定かじゃないけどさ」
どうなのだろうか?
本当にそうだとしたら喜んでいいのかな!
わたしは心につっかえているあの言葉を言えないまま。
そのうち聞いたらいいのかな?
ずっと聞かない方がいいのかな?
聞いたら何かいけない気もするし
テラさんがやってきた。
「時間だよ!長居したら戻れなくなっちまう」
名残惜しい、名残惜しい、もうそばで話していたい
でもまだわたしがこちらの世界に来るのは早すぎる
「わかりました!戻ります」
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