第5話 プロメテウスの末路
子供たちはまだ薄暗い時間に叩き起こされ、訓練場へと連れ出された。
それは、過酷という言葉では到底言い表せないものだった。
身体強化訓練
フィジカルトレーニング
持久走──朝から晩まで数十キロを走らされる。倒れれば容赦なく叩き起こされ、再び走るよう命じられる。
筋力トレーニング──ウェイトを使った強制的な筋力強化。限界を超えた状態でさらに追い込まれる。
格闘訓練──徒手格闘、ナイフファイトの基礎を徹底的に叩き込まれる。負ければ容赦なく制裁が加えられる。
低酸素・高重力環境での適応訓練
極限状態でも動けるようにするため、低酸素室や人工的に重力を増した部屋での訓練が行われる。
酸素が薄い空間で、意識を保ちつつ目標を遂行する能力を磨かされる。
高重力環境では、関節や筋肉に過剰な負荷がかかり、多くの者が怪我を負った。
薬剤投与
筋力増強、反射速度向上、耐久力強化のための薬が投与された。
副作用として、一時的な高熱、筋肉痛、頭痛、幻覚が発生する者もいた。
薬が合わずに倒れる者もいたが、治療されることはなかった。
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戦術教育
軍事戦略学習
タイタンズとの戦いに必要な戦術論、兵器の知識、指揮系統などを叩き込まれる。
座学では徹底的に知識を詰め込まれ、理解が追いつかない者は容赦なくふるいにかけられた。
集団戦闘訓練
班ごとに戦闘技術を磨かされ、連携能力の向上が求められた。
リナはチームワークに優れ、仲間たちとの協調性を高めていった。
対照的にハルは単独行動が多く、指揮系統を無視しがちだった。訓練担当者からの評価は極めて低かったが、それでもハルは独自のやり方で生き残った。
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睡眠剥奪
72時間以上の覚醒状態を維持しながら戦闘訓練が課せられた。
意識が朦朧とする中での射撃、戦術実行が要求され、倒れる者は次々と排除された。
痛覚耐性訓練
電気ショック、氷水への長時間浸漬などが行われ、痛みに対する耐性を鍛えさせられた。
叫べばさらに強い刺激を与えられ、泣き叫ぶ声が訓練施設に響き渡った。
「……もう嫌だ……」
ある少年が呟いた。
その次の瞬間、彼は手に持っていたナイフを自分の喉元に当て、躊躇なく引いた。
周囲に血が飛び散る。
誰も叫ばなかった。ただ黙って、それを見ていた。
すぐに係員がやってきて、彼の遺体を無造作に運び去った。
まるで、ゴミを片付けるかのように。
誰も反応しなくなった頃が、最も危険だった。
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精神強化訓練
極限環境での耐久
独房のような暗闇で何日も過ごし、極限状態での精神力を試された。
極寒の地で最低限の装備のみでのサバイバル訓練が行われ、夜間の冷え込みで凍死する者もいた。
雪が深く積もる山中。吹き荒れる風が肌を切り裂くように冷たい。
訓練生たちは支給されたわずかな防寒具とナイフ、最低限の食糧を持ち、山を越えて指定のポイントへ辿り着くことを命じられていた。
夜になり、気温は氷点下にまで下がった。体温を奪われ、指先の感覚がなくなっていく。
ハルは無言で雪を踏みしめながら歩き続けていた。後ろから、苦しげな息遣いが聞こえる。
リナだった。
「……ハル……ちょっと、待って……」
彼女の声は弱々しい。立ち止まると、リナの足元がふらつき、次の瞬間――彼女は崩れるように雪の上に倒れ込んだ。
ハルは眉をひそめ、足を止める。
「おい」
呼びかけるが、リナは返事をしない。肩を揺すっても、ぐったりして動かない。
(低体温症だ……このままじゃ死ぬ)
ハルは一瞬、立ち止まり考えた。
助けるべきか、それとも置いていくべきか。
弱い者は死に、強い者だけが生き残る。それが、この地獄のような訓練で教えられた唯一のルールだった。
だが――その時、頭の中で母の声が響く。
「守れ」
それは、彼がスラムで生き抜くために母が残した言葉。
「……クソが」
雪を掻き分けてリナを抱き起こし、背負う。
ハルは迷わなかった。
雪の中を進み、崩れかけた山小屋を見つけた。中に入り、壁際でリナを横に寝かせる。
彼女の呼吸は浅い。肌は冷たく、唇は青ざめていた。
(温めないと……)
訓練では、「低体温症の時は、体温を直接伝えろ」と教えられていた。
ハルはリナの上着を開き、自分のジャケットを脱ぐと、迷わず彼女の身体を抱き寄せた。
「……は……る……?」
かすかにリナが呟く。
「黙って寝てろ」
そう言って、彼はぎゅっとリナを抱きしめ、体温を分け与えた。
翌朝、リナは目を覚ました。
「……生きてる……?」
ぼんやりと呟いた彼女の目の前にいたのは、無表情のまま火をくべるハルだった。
「お前が勝手に生き残っただけだ」
ハルはそっけなく言いながら、彼女に水筒を差し出す。
リナはそれを受け取り、弱々しく微笑んだ。
「……ありがと」
ハルは答えなかった。ただ、立ち上がり、背を向ける。
「行くぞ。置いていかれたくなきゃ、立て」
リナは少し苦笑しながら、ゆっくりと立ち上がる。
その後、二人は再び歩き出した――死の訓練が続く世界の中で。
訓練が始まって数か月。子供たちの数は半分以下になっていた。
精神崩壊、肉体の限界、感染症、栄養失調──様々な理由で脱落していった。
彼らはただ、静かに処理され、名も残さず消えていった。
ハルとリナは、その過酷な環境の中でも生き延びていた。
リナは持ち前の適応能力と判断力で、チーム戦の中核を担う存在になりつつあった。
ハルは指示に従わず、独自のスタイルで訓練を乗り越えていた。
教官たちはハルを「問題児」として見ていたが、彼が生き延び続けている事実だけは認めざるを得なかった。
ある夜、リナは静かにハルに言った。
「……ねえ、いつまでこんなこと続くのかな。」
ハルはぼんやりと天井を見つめたまま答えた。
「生き延びるまで。」
それは、彼にとって当たり前の答えだった。
この場所にいる以上、選択肢はない。
生きるか、死ぬか。
ただ、それだけだった。
訓練が始まってから一年が経った。
最初に集められた数十人の子供たちは、今では六人にまで減っていた。男四人、女二人。生き残った者は、それぞれ地獄のような訓練を耐え抜いた証だった。最初は互いに見知らぬ存在だった子供たちも、今では小さな家族のような絆を築いていた。
リナは持ち前の優しさと冷静な判断力で、グループの精神的な支えとなっていた。彼女の指揮能力は訓練の中でも際立っており、集団戦闘訓練では仲間を鼓舞し、戦略を考えながら戦うことができた。彼女の言葉は、極限状態の中で仲間たちの心を落ち着かせる役割を果たしていた。
一方、ハルはどんな状況に置かれても顔色一つ変えず、淡々と訓練をこなしていた。その冷徹とも言える態度と、他の追随を許さない戦闘能力は、訓練担当者からも高く評価されていた。彼は感情を押し殺し、与えられた試練を乗り越えることにのみ集中していた。
そんなある日、再び斎賀が現れた。
訓練場の一角にある簡素な集会室に呼び出された六人は、静かに椅子に座っていた。そこに、あの男が入ってくる。相変わらずの薄ら笑いを浮かべながら、子供たちを見回す。
「よくここまで生き延びたな」
彼の言葉に、誰も喜びの表情を浮かべなかった。むしろ、警戒と嫌悪の視線が彼に向けられる。
「そんな顔するなよ。お前たちには朗報だ。訓練は次のフェーズに入る」
斎賀はまるで楽しいゲームでもしているかのように、軽い口調で続けた。
「これからは、お前たちを“ルーメン”に適応させる」
その言葉に、室内の空気が一変した。
ルーメン――それは、この世界の生命線であり、同時に人間にとっては危険な代物でもあった。過剰に浴びれば、身体に異常をきたし、最終的には死に至ることもある。
「タイタンズと戦うには、ルーメンの力を使うしかない。そのためには、お前たちが適応する必要がある」
「……適応?」
リナが不安げに問い返す。
「そう。ルーメンをお前たちの肉体に組み込むということだ。もちろん、適応できなければ死ぬ」
誰も言葉を発さなかった。
「だが、適応できれば、これまでの訓練とは比べ物にならない力を手に入れることができる。マキナアークスを操縦するためには、ルーメンに耐えうる肉体が必要なんだよ」
斎賀の言葉は淡々としていたが、その背後には子供たちの運命を弄ぶ冷酷な意図が透けて見えた。
「次のフェーズは生易しくないぞ。だが、お前たちならできるだろう?」
彼は皮肉めいた笑みを浮かべながら、そう言い残し部屋を去った。
子供たちはしばらく沈黙していた。
食堂に戻った彼らは、それぞれの席に着き、食事を前にしても誰も箸をつけなかった。誰もが考えていた――次のフェーズに進むべきか、それとも、ここで終わるべきか。
「……どうする?」
誰ともなく、そう問いかけた。
リナはふとハルの方を見る。彼はただ静かに座り、何も考えていないように見えた。いや、むしろ何も感じていないのかもしれない。
「ハル……あんたは、どう思うの?」
彼女の問いに、ハルは小さく息を吐いた。
「進むしかない」
それは、迷いのない声だった。
子供たちの間に、緊張が走る。リナは目を伏せた。
「……それしか、ないんだね」
その夜、子供たちは眠れなかった。
翌日から始まる新たな試練が、どれほどの犠牲を伴うのか、誰にも分からなかった。ただ一つ、確かなことがあった。
これまでの試練が生ぬるく思えるほどの地獄が、これから待っている。
ルーメン適応訓練が始まった。
それは、今までの訓練とは比べものにならないほど過酷なものだった。生存者はわずか六人。ハルとリナもその中にいた。フェーズ1の訓練を継続しながら、ルーメン適応訓練が進行していく。
まず、訓練生たちは微量のルーメンに晒される試験を受けた。ルーメンはその神秘的な力と引き換えに、人体に多大な負荷を与える。最初の数週間は、特殊なチャンバー内で低濃度のルーメンを吸入する形で行われた。
「体内に少しずつ慣れさせれば、適応の可能性が高まる」──研究者たちはそう説明したが、実際の結果は無慈悲だった。
一人目が脱落したのは、開始から三日目のことだった。突然、体中の血管が膨張し、高熱を発しながら絶叫を上げた。リナが咄嗟に助けに向かおうとしたが、ハルが腕を掴み、首を振った。
「……もう無理だ。」
彼の言葉通り、その訓練生は数分後に息を引き取った。
生き残った五人は、次の試練──ルーメン溶液浸漬へと進んだ。特別な液体にルーメンを溶かし、それに浸かることで体内適応を加速させるというものだった。
「時間をかけて少しずつ……だと?」
ハルは微かに眉をひそめた。「だったら最初から直接浴びせればいいだろ。」
「そうしたら死ぬからよ」と、監視役の研究員は皮肉げに答えた。
溶液はじわじわと体を蝕むように作用し、全身が燃えるように痛んだ。耐えられなかった二人が倒れた。
最初に倒れたのは、細身の少年だった。彼は唇を噛み締めていたが、やがて泡を吹き、意識を失った。
「ダメだ、心停止してる!」
看護班が駆けつけたが、助かることはなかった。
次に、仲間の少女が壁にもたれたまま動かなくなった。
「……もう無理。もう耐えられない……」
その言葉を最後に、彼女は意識を失い、目を覚ますことはなかった。
残ったのは、ハル、リナ、そしてもう一人の訓練生だった。しかし、最終試練はさらに残酷だった。
今度は、ルーメンを体内に直接取り込むルーメン強制摂取。特殊なカプセルを飲み込み、ルーメンが血液を巡る状態を強制的に作り出す。
「……本当にやるの?」
リナが呟いたが、誰も答えなかった。
三人は一斉にカプセルを飲み込んだ。次の瞬間、全身が焼けるような激痛に襲われた。視界が揺れ、呼吸がうまくできない。
「……ッ!?」
少年の体が痙攣し、血管が光を帯びて膨張する。
彼の皮膚が変色し、爪が異様に伸びた。目が虚ろになり、口から意味不明な言葉を漏らす。
「……か、あ……」
「ぐあああああ!」
最後の生存者が悲鳴を上げ、床に転がった。彼の血管はルーメンの発光を受けて光り、激しく痙攣しながら数秒後に静かになった。
ハルとリナだけが生き残った。
一年に及ぶルーメン適応訓練が終了し、最終的に生き残ったのはハルとリナの二人だけだった。
ルーメンの適応により、二人の身体能力は大きく向上していた。
最初にいた数十人の子供たちの姿はもうない。訓練中に倒れた者、耐えきれず精神を壊した者、適応できずに命を落とした者……彼らは皆、この過酷な計画の犠牲となった。そして、今ここに立っているのは、ただ二人だけ。
部屋のモニターが作動し、あの忌々しい男の顔が映し出された。
「よくここまで耐え抜いたな、君たちを心から祝福しよう」
斎賀は、いつもの薄ら笑いを浮かべながら言った。その言葉には皮肉や嘲りはなかった。いや、そんなものを超越した淡々とした響きがあった。
「君たちは、正式にA.R.K.のパイロット候補生となった。おめでとう、霧島ハル、石神リナ」
画面が消え、沈黙が落ちた。
その日の夕食は、今までとは違っていた。
いつもは栄養価だけを考えた無機質な食事。だが今日は、肉やスープ、焼きたてのパンが並んでいた。暖かく、香ばしい匂いが漂う。しかし、二人はなかなか手を付けられずにいた。
「……お祝いのつもり、なんだろうね」
リナがぽつりと呟いた。
ハルは黙ってスプーンを手に取る。しかし、食べ物を口に運ぶことなく、じっと皿を見つめていた。
「……私、まだ信じられないよ」
リナはスプーンを持つ手を止めた。
「みんな……いなくなっちゃったね」
その声には、悲しみと疲れ、そして後悔が滲んでいた。リナは視線を落とし、沈黙が流れた。
「お前は……よくやったよ」
ハルが不意に口を開いた。
リナは驚いたようにハルを見た。彼がこんなふうに誰かを労うことなど、今までなかった。
「お前がいたから、俺はここまで来れた」
それは、彼なりの感謝の言葉だった。
リナは言葉を失った。ハルの顔を見つめると、彼の瞳には僅かながらも、本当に僅かだが、確かな感情が揺れていた。
「……ありがとう」
リナは静かに微笑んだ。しかし、その目には涙が滲んでいた。
「……それと」
ハルは視線を落とし、続けた。
「スラムで……人を殺したこと。ずっと……お前に言わなかったけど……すまなかった」
リナは驚いた表情を浮かべた。ハルが、自分の行いについて謝罪するなど、想像もしていなかった。
「……でも、それがなかったら、お前も、あの時……」
ハルは言葉を詰まらせた。リナは何も言わなかった。ただ、彼を見つめていた。
「お前を……守れなかったかもしれない」
それは、彼なりの後悔だったのかもしれない。
リナの目から涙がこぼれ落ちた。彼女はそれを拭いもせずに、ただ静かに笑った。
「……ハル」
彼女はそっと手を伸ばし、ハルの手を握った。その手はいつもより温かかった。
その瞬間、二人の間に漂っていた張り詰めた空気が、少しだけ和らいだような気がした。
この地獄のような訓練を生き延びた二人。
彼らの未来には、まだ何が待っているのか分からない。
だが、今だけは。
このひと時だけは、穏やかでありたかった。
翌朝、ハルはいつもと同じ時間に目を覚ました。
長く続いた過酷な訓練は終わり、今日からは新しい日常が始まるはずだった。しかし、何かが違う。毎朝の日課のようにリナが迎えに来ることはなく、部屋の外は不気味なほど静まり返っていた。
ハルはベッドから起き上がり、簡単に身支度を整えると、部屋を出た。
廊下に足を踏み入れると、いつもなら訓練に向かう者たちの足音や、誰かの囁き声が響いているはずだった。しかし、今は何も聞こえない。人の気配すらない。まるで施設全体が時間を止めたかのように、静寂が支配していた。
違和感が背筋を這い上がる。
(……何かがおかしい)
ハルは施設の奥へと進みながら、胸の奥に生じた不安の正体を探った。施設の壁は無機質で、いつもと変わらないはずなのに、異様な閉塞感を感じる。ドアを開けても、どの部屋にも誰もいない。
彼は食堂へ向かった。しかし、そこもがらんとしていた。テーブルは整然と並び、食器も綺麗に片付けられている。まるで誰も存在しなかったかのような静けさ。
その瞬間、施設内に低く響く電子音が鳴り、天井に埋め込まれたスピーカーから声が流れた。
「お目覚めかい、霧島ハル」
嫌な声だった。
厭味ったらしい調子、抑揚のある語り口――間違いなく斎賀の声だ。
「お前を待っていたよ。さあ、私の部屋まで来なさい」
その言葉を最後に、スピーカーは沈黙した。
ハルの拳が自然と握られる。
(……何が始まる?)
ただならぬ空気が、彼の五感を鋭く刺激した。彼は呼吸を整え、迷わず斎賀の部屋へと向かう。
足音が響く中、胸騒ぎは収まるどころか、ますます強くなっていった。
ハルはゆっくりと部屋の中へ足を踏み入れた。部屋の中央には椅子に縛られたリナがいた。
「ハル……助けて……!」と声を震わせる。
彼女の目には涙が浮かび、唇は震えている。
モニター越しに斎賀がにやにやと笑みを浮かべ、武装した男たちはハルに小銃を構え、いつでも撃てる体制をとっていた。
「ようこそ、ハル。ここまで来たお前には、最後の試験を受けてもらう。」
斎賀の声は、いつもと変わらぬ軽薄さを帯びていたが、そこには冷徹な命令の響きがあった。
「リナを殺せ。」
その言葉が告げられた瞬間、室内の空気が凍りついた。
リナの息が詰まり、ハルの胸に冷たい鋼のような感触が広がる。
「……どういうことだ?」
ハルは低く問いかけたが、その目はすでに鋭い警戒の色を帯びていた。
「そのままの意味さ。お前が我々に従順であるか、忠誠を誓うに足る存在かどうかを試す。」
斎賀は椅子に深くもたれ、モニターの向こうで気楽に脚を組んだ。
「……最初からリナは……」
ハルの声は低く、静かだった。しかし、その内側では怒りが煮えたぎっていた。
「そう、最初から君たちの生死を分けるのはお前だった。リナには期待していなかったが、お前は別だ。お前が忠誠を誓うなら、ここでリナを始末しろ。できなければ…二人とも『処分』だ。」
斎賀がにやりと笑う。
リナの肩が震えた。
「ハル……っ!」
泣きそうな声が彼を呼んだ。
タイタンズ・レクイエム〜巨神達の鎮魂歌〜 小佐野螢 @kosanokei1109
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