母から自由になるために!〜アダルトチルドレン奮闘記

森本ヴィオラ

第1話 母のペースに巻き込まれないためには?

 私は27歳のとき、「アダルトチルドレン」だと自覚した。「アダルトチルドレン」とは、「現在の生きづらさが親との関係に起因すると認めた人」のことだ。

 私は母が怖かった。怒られる夢はもう何千回も見た。鬱状態のときは、母の言動に苦しんだ幼い頃の記憶がフラッシュバックした。

 小学5年生のとき、信州へ林間学校に行った。いつも母からお金を使いすぎないよう言われていた私は、フルーツ羊羹を一つお土産に買った。家に帰ったら、「お土産これしか買ってこなかったの。ケチだね。」と言われた。私はこの世の終わりかというほど泣いた。


 私は母に苦しめられていると気づいたとき、大きな秘密を抱えてしまった、と思った。せめて父か妹に吐き出したいと思ったが、「今はまだうまく説明できないでしょ」とカウンセラーに止められた。

 アダルトチルドレン関連本を読みあさった。スーザン・フォワード『毒になる親』には、親にすべてを話して「対決」すべきだ、と書かれている。ただし第三者を必ず入れる必要があるらしい。一方で、『母が重くてたまらない』で著名な信田さよ子氏は、「対決」よりも、母への対応を変えることで心理的距離を作り、関係性を変化させることを促す。

 私は後者のメソッドを参考にした。母には丁寧な言葉遣いで接し、自分の望まないことをされたときには断る。これだけだ。

――これがどんなに難しいことか、当事者でない方には伝わらないかもしれない。27年間、母に逆らったことがない私が、母からのアプローチを「断る」。それは手に汗握る……いや全身から汗が吹き出して震えてしまうほど大きなことだ。


 とにかく実行した。私は母が私のために買ってきたバッグを断った。母は仰天した。その後も、丁寧語で話す、聞きたくない話は早々切り上げる等、母のペースに巻き込まれないようにした。

 不思議なことに、母は次第に干渉しなくなってきた。うまくいっているように思えた。


 このときは、その後母からの反撃があることなど全く予想していなかった。

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