第3話 (上) アイドルの声が届かないなんて、あり得る?

つきちゃん、宿題終わった?』

前髪を直しながら、スマホを見ると玲奈れいなちゃんのLINEでした。

『今終わったところです』

既読が即について、玲奈ちゃんが続きました。

『全然できないし、手伝ってくれる?』

『いいよ』

間もなく、玲奈ちゃんがビデオで電話掛けてきました。スマホを横向きにして、壁に立てかけて机に斜めに置きました。画面を見ると、黒髪ロングと緑色の目の玲奈ちゃんが写っていました。


「部屋着可愛いね!」

「あっ、ありがとう」

玲奈ちゃんの褒め言葉に照れながら、玲奈ちゃんの服をみます。制服はまだ外してません。学校ではドジっ子で有名な玲奈ちゃんだけど、平日に寝るまで制服着てるだけで真面目さが伝わってきます。私と玲奈ちゃんはこうして言えると思います。私と玲奈ちゃんは、転校前の学校でクラスのトップ成績と甘えん坊な友だちでした。

「どこか困ってましたか?」

「実はさ、六番は全然わからないね」

「今日の授業範囲でした」

「知ってる。知ってるけど、ひかるさんのことに夢中で」

そう言いながら、玲奈ちゃんの頬が少し赤めます。

「恋って毒ですよね~」

「いや、素敵だよ!朝起きたら、今日もひかるさんと会えて嬉しいなって、昼食べるとひかるさんが僕の料理を食べたらどんな顔するんだろうって、帰り道にひかるさんと帰ったらどんな話してくれるんだろうって、寝る前に今日もひかるさんの夢を見られるんだろうって、毎晩寝落ちるとひかるさんが白い馬に乗らせてもらって一緒に学校行く夢を見てる」

「最後のはディズニー見すぎでしょう?」

恋愛脳をさらけだす玲奈ちゃんにツッコミを入れると、私たちが爆笑します。

「僕、シンデレラになっちゃう?」

我に戻った玲奈ちゃんがまた冗談を挟もうとするが、私が集中して、今回の笑いを堪えた。

「月ちゃんって面白くないね~」

(えっ?)

今のは妙に胸に刺さりました。気のせいだったかもだけど、さっきより冷やな声でこう言われると居心地が良くなかったです。玲奈ちゃんが時々こんな地雷を笑顔で踏むから、別に意図的じゃない可能性もあるけど、たまには心配しています。

(取り敢えず今日は宿題が本命だから、宿題を手伝いましょう)

「六番でしたね?」

「そう」

宿題やってた時に使ってたペンをとって、ノートに授業内容をまとめて、画面で写って待っていた玲奈ちゃんを改めて見るといつものやり取りになります。

「準備できた?」

「準備万端です」

「お願いします」

これを言う玲奈ちゃんに画面越し頭を下げられて、説明を始めます。


説明した後に通話を切らずに暫くすると、玲奈ちゃんに画面越しに回答用紙を見せられます。

「すごいです!全部正解です!」

玲奈ちゃんがガッツポーズを取り、唇を丸めて目を反らしながら、言います。

「月先生がいつも丁寧に説明してくれるから~」

「テスト中に覚えると絶対満点取れますよ!」

「誉めすぎて、照れるよ」

玲奈は頬が赤めながら、 小咳をして気を取り直します。

「今日、ありがとう。疲れたから、お風呂入って寝る!おやすみ~」

玲奈ちゃんが通話を切らずに立って、制服を外しかかります。

(えっ?通話を切らずに?)

熱が頭に上って、慌てて両目を手で覆います。

「玲奈ちゃん、通話切ってないです!」

指中の空間から恐れ恐れ覗くと、制服の圧力から解放されて、上半身から手で納めそうな桃が実ります。

(うらやましい~いや、それじゃないです)

玲奈ちゃんがブラを外すためにそこら辺に手を伸ばします。

(このままじゃ、丸見えです!)

再び声をかけます。

「玲奈ちゃん、全部見えてます!」

ブラを外すと、桃は完全に自由になります。

(何で聞こえてないですか?)

さっきの通話であったことを振り返ります。目を反らした時、耳にありました。玲奈ちゃんの耳を再び見ると今はないです。まさかと思ったら、画面越しに机の辺りを確認すると、目に入りました。机の上にあります。AirPodsの一つがあります。

(これ、大音ならつけてなくても、聞こえますよね?)

スマホに顔を近づいて、思い切り叫びます。

「玲奈ちゃん、脱いでるの全部見えてます!」

そしても、玲奈が聞こえなかったようですが、生声が私の家で響きました。


「瑠奈どうした!?」


お母さんでした。そして、生声が出た十秒後、部屋のドアの音でした。お母さんがひょっこり顔を出します。

「瑠奈、深夜に急に叫んでどうした?」

お母さんがいつも私のことを見てくれて、恵まれてると思うけど、今は最悪てす。お母さんが部屋を見渡すと、スマホの画面とその目が合いました。お母さんの顔が真っ青に一変しました。

「瑠奈はそっちだったか~ご、ごゆっくり~」


お母さんがドアを閉じて、瞬間。我に帰って、席から一気に立ちます。

「誤解です!」

でも、通話だろうと生声だろうと誰にも届かず、恥ずかしすぎて、今晩は部屋からでないことにしました。スマホの方に戻ると通話は向こうから切られていました。メッセージ欄にお洒落なカフェのリンクと画像に並んで、玲奈ちゃんのメッセージがありました。


『明日放課後、行こ?』


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