第7話 ミンチーの正体
後日私と妻は児童相談所に足を運び、娘の現状を支援員の方に伝えた。そして、そこで、依存物への脱却を専門とする施設を紹介され、そこに娘を入所させることを決心したのだ。
娘は当初、施設に入所することに強い抵抗を示すと思われた。しかし、娘自身も自分を変えたいという気持ちが強く、予想外にあっさりと入所することを彼女は認めたのだ。とはいえ、入所日にミンチーと離れる際はやはり、彼女の不安が爆発したのか大パニックを起こし、改めて我々は依存の恐ろしさを見せつけられるのであった。最終的に、我々夫婦と施設の支援員とで娘を説得し、娘はミンチーを妻に渡して家を出ていったのだ。
ミンチーと分離をさせて、約1ヶ月が過ぎた頃、娘はまだミンチーに未練がある感じではあったが、なくてもパニックは起こさなくなっていった。面会を重ねるごとにその表情も明るくなっていた。そして、3ヶ月が過ぎた頃にはすっかりミンチーへの思いは消え、施設を退所することが認められたのだ。私は心底、ホッとした。これで、またもとの平和な家族に戻れるのだなと。
ところで、ミンチーは今どこにあるかというと、それは私の妻の手元にある。そして、妻は今、かつての娘と同じようにミンチーにどっぷりはまっている。
後で知ったことであるが、ミンチーに使われていた材料の一部にはある化学化合物が含まれていたそうだ。また、その化合物には強力な興奮作用があり中毒症状を引き起こす危険性もあったそうだ。それが全国ニュースで発表されて以来、ミンチーの大量回収が国によって義務付けられたが、返却されたミンチーの数は売られた数に対して極度に少なかったそうだ。
ミンチー Sugie Bunko @mintiti
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます